2007年11月01日 00:00 〜 00:00
ワリード・マハムード・アブデルナーセル・駐日エジプト大使

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会見リポート

“地域の安定剤”として

池村 俊郎 (読売新聞調査研究本部主任研究員)

ナイル川とピラミッド。エジプトは日本人にとって、アラブ世界の代表国家であり続ける。10月に着任した新大使は昨年まで駐米次席大使。エジプト外交にとり、重要な日米両国を続けて担当することに、着任早々から張り切っていると聞く。

「エジプトの役割は地域の安定剤。ただし、日本や米国、欧州連合(EU)との協調なしには、その役割を果たせない」。イラク戦争、イスラエル─パレスチナ紛争、レバノン危機、イラン核疑惑、クルド問題…火ダネの絶えない中東地域で、エジプトの存在感と政治力は頼みの綱だが、サウジアラビアなど湾岸産油国の声が一段と強まるにつれ、相対的な地盤沈下の印象も否定できない。

その点を司会の脇委員に質問されると、「中東もアラブ世界も50年前とは違う。経済も多様化した。多くの国に活躍できる場ができたが、エジプトにしか切れないカードがある」。レバノン、スーダン・ダルフール危機をはじめ、縁の下で力を尽くす同胞外交官の努力を強調した。

新大使はジュネーブ駐在を10年務め、外務大臣官房でアジア地域を担当している。日本で長期駐在は初めて。前任のバドル大使がエジプト外務省きっての日本通で知られたのに対し、オール・ラウンド型のベテラン外交官らしい持ち味を期待される。

「エジプトも日本も“古代国家”、つまり何千年も存在してきた。だから、地域で力を発揮できる」と大使は述べる。確かに、拠り所となる相手国を欠くと、一国の地域外交は機動性を失う。その点で、アラブ、アフリカ地域で重きをなし、イスラム文明の代表国家、観光大国、教育・人材交流の主要相手国として、エジプトの位置づけをいま一度、とらえ直してほしい。新大使のメッセージをそう受けとめた。

ゲスト / Guest

  • ワリード・マハムード・アブデルナーセル / Walid Mahmoud Abdelnasser

    駐日エジプト大使 / Ambassador of Egypt to Japan

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