2007年06月05日 00:00 〜 00:00
セリム・セルメット・アタジャンル・駐日トルコ大使

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会見リポート

トルコはどこに向かうのか

福島 良典 (毎日新聞外信部副部長)

トルコは魅力にあふれた国だ。なぜだろう。思いを巡らせると、かつて駐在したエルサレムとの共通項に突き当たる。文明の十字路に位置するトルコと、東西に分断されたエルサレム。共通するのは、異質なものの「出会い」の場であることだ。

だが、出会いは時に苦悩を伴う。トルコは欧州なのか、アジアなのか。世俗主義を貫くのか、イスラム色を強めるのか。イスラム系大統領の誕生を危惧した世俗派の大規模デモや、欧州連合(EU)加盟方針に対する国民の支持の低下傾向は、悩めるトルコの一面を映し出す。トルコはどこに向かうのか──。

大使の答えは明確だ。「トルコは欧州の一部」「トルコのEU加盟で欧州統合が完成される」「世俗主義は国民の生活様式。後退はない」。メモを手に流暢な英語で「立て板に水」の返答だ。有能な外交官の本領発揮といった感がある。

しかし、ふと疑問が頭をもたげる。果たしてそれがトルコ国民の一般的な思いだろうか。「トルコは欧州ではない」と決め付ける欧州政治家に憤りを感じないか。ブティックやディスコよりも、モスクに足が向かわないか。そこが知りたい。

冷戦時代、トルコはソ連ににらみを利かせる北大西洋条約機構(NATO)の橋頭堡だった。今、欧米社会の課題はイスラム世界との付き合い方だ。EUとイスラム諸国会議機構(OIC)の対話を促進するトルコの外交姿勢には「東西を引き合わせる」気概がうかがえる。

ただ、クルド問題への対応では「国内で議論されているところ」と大使も歯切れ悪かった。EU加盟条件を満たすためトルコは死刑制度廃止などの改革を進めた。「クルド」は安全保障に直結する懸案だが、そこでも対話の精神を示してほしい。

ゲスト / Guest

  • セリム・セルメット・アタジャンル / Selim Sermet Atacanli

    駐日トルコ大使 / Ambassador of Turkey to Japan

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