2006年08月09日 00:00 〜 00:00
石川忠久・漢字文化振興会専務理事

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会見リポート

漢字文化の再興を説く伝道師

藤田 精一 (日本経済新聞出身)

パソコン、ワープロの普及で日本人の漢字力が落ちているという。一方では漢字検定受験者の増加や漢字クイズ本が売れるなど、漢字再評価の機運も見える。「日本人と漢字」を考えるとき、この落差をどう見たらよいのか。

漢詩の泰斗にして元大学教授の石川先生は、さほど意に介していないように見える。「学生の答案に漢字ならぬ〝感字〟が目に付くが」との質問にも、「それでも漢字を書こうとしているわけですから」。日本の若者に対する信頼は厚いようだ。

その自信は自ら推進役になって設立した漢字文化振興会の活動からくるらしい。かつて国語科目の中に6単位あった漢文の時間が、ついには実質ゼロになってしまった現実を踏まえ、各地で草の根漢文授業ともいうべき講演会やシンポジウムを催している。旧藩校の地で開く藩校サミットも5回を数えたという。漢文教育こそ教養の源、との信念からだ。

先生は熱く語る。失語症患者が漢字だけは認識できたという大脳生理学の成果を引き合いに、視覚に訴える漢字の優秀性を説いたと思えば、仮名の発明はもとより、漢文読解に訓読法、返り点を生み出した日本人の能力の高さを力説する。頼山陽を頂点に花開いた独自の漢詩文化についても、「今では日本が中国よりはるかに上」──自負ものぞかせた。

久しぶりの「講義」で興が乗ったか、漢字制限や新字体など「戦後漢字政策の愚」から、中国の簡体字、はては中国の政治に至るまで話は縦横に飛んで、あっという間に時間は過ぎていった。

この日のため詠んだ七言絶句二首と、自著『漢詩への招待』から王之渙の「涼州詞」を流暢な中国語で披露して会見を締めくくった。中学時代の漢文の授業を思い出した。

ゲスト / Guest

  • 石川忠久 / Tadahisa Ishikawa

    漢字文化振興会専務理事

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