会見リポート
2005年10月28日
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佐野眞一・作家「著者と語る」
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会見リポート
満州と日中戦争から逆照射
増田れい子 (名誉会員 毎日出身)
『阿片王 満州の夜と霧』(新潮社)はこの7月刊行、8刷を重ねた。将来3部作になる満州ものの第1作で、戦後の高度成長の光と影を満州と日中戦争から逆照射して検証したいと気宇壮大。この「阿片王」には10年かけた。佐野さんはその人物を「下半身闇に溶けた男」と書くが、軍部と結んで阿片を密売し旧満州国と日中戦争の裏舞台を切りまわした怪物里見甫(1896~1965)の想像を絶した生涯を描いた大作である。
偶然、里見の遺児の奨学資金募集名簿を入手したのがきっかけで取材は進むが、はて面妖な人物が次から次へ現れて佐野さんもくらくらしたらしい。450ページの最後は急死した里見の頭蓋骨が阿片吸引者を示してピンクに染まっていたこと、その墓碑が満州国は私の作品と誇った岸信介が記したことで終わる。登場人物は千人にものぼる。
佐野さんの眼力のすごさは日中戦争とは関東軍と蒋介石が阿片を奪い合った戦争と位置づけた上で、「阿片」は軍資金のモトだっただけでなく「メディア」であった、つまり売買することによって貴重な情報を得る情報資源だったと指摘したことだ。
だが…と頬をゆるめて言った。「阿片は厄介だがコントロール可能。人間は始末におえない。人間は阿片より阿片だ」。次に書くテーマは満州のエンマ大王甘粕正彦。たのしみ。
ゲスト / Guest
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佐野眞一 / Shinichi Sano
作家 / writer
研究テーマ:著者と語る
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