会見リポート
2005年11月09日
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植松治雄・日本医師会会長「社会保障(6)医療改革」2
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会見リポート
医療費抑制論を批判
水内 茂幸 (産経新聞政治部)
高齢化社会の到来に伴い、20年後に倍増が見込まれる医療給付費。これを抑制するため、厚生労働省は10月、高齢患者の窓口負担率を引き上げる試案を発表。経済財政諮問会議や財務省は、診療報酬の大幅引き下げや経済指標と連動した総額管理制度導入など、より厳しい見直しを求めており、大綱策定に向け議論は佳境を迎えていた。
植松会長は一連の議論に患者の負担増が目立つことに「受益者負担と呼ばれるが、患者は受難者。経済理念だけで考えれば、医療の質の低下を招き、世界最長を誇る日本の平均寿命が縮む」と厳しい。国民総生産(GDP)に対する総医療費の割合は先進諸国より低く、医療費増加は寿命の伸長が最大の理由と持論を展開。医療費の新たな財源として「年金額を抑制しても医療にまわすべき」とまで言及した。
質疑では、医療制度改革に対する医師会のパンフレットが取り上げられ「診療報酬改定へ言及がない」と厳しい批判も。「自民党への多額の献金は効果を上げているか」と皮肉めいた問いには「正直頭をかくね。これまでは『ください』といった分だけ出したが…」と本音も漏れた。
日本の医療は、ぎりぎりまで経費を削りながら世界最高水準だと胸を張る植松会長。これを支えた国民皆保険制度が「今回の改革で崩壊の危機にある」と訴える。郵政と違い命に直結する分野だけに、国の財政事情だけで確かに推し量れないが、現在の医療に無駄遣いがなかったのか。「自己検証」がもう少し聞きたかった。
ゲスト / Guest
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植松治雄 / Haruo Uematsu
日本医師会会長 / Chairman, Japan Medical Association
研究テーマ:社会保障(6)医療改革
研究会回数:2
