2004年10月04日 00:00 〜 00:00
ピーター・ピオット・国連合同エイズ計画事務局長「HIV/エイズ」18

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会見リポート

エイズの女性化と普遍化

本田 雅和 (朝日新聞社会部)

ピオット博士は「エイズの女性化」をあらためて強調した。1981年にエイズが発見された当時、今からふり返れば偏見ではあったが、中流階級の白人の同性愛者に典型的な病気だと見られていた。今や3780万人のHIV感染者の半数は女性であり、アフリカでは60%を占める。

つまり、対策を怠れば、HIVエイズは今や世界中どこででも爆発的に拡大する恐れがあることを意味している。博士は政治的指導力の強化の必要性、ジャーナリストの責任と役割の重要性も指摘した。

一方、アジアではこれまで消極的だった中国政府がUNAIDSと協力しながら積極姿勢に転じたこと、タイやカンボジアで感染率を低下させることに成功したことなど、明るい材料も報告された。

5人に1人が感染者だとされるザンビアを調査してきた筆者が「サハラ以南のアフリカの絶望的状況」をアジアと比較して質問したのに対し、博士は、絶対的貧困から来る売春の広がり、識字率や教育の不備から来る知識・情報の不足、女性の地位の低さとともに、「長年の政治的指導力の欠落は否めない」とした。

こうした「失われた時間」はあったものの、現在のアフリカ各国の指導層は「エイズ問題の深刻さを認識している」とし、都市部の若者の間では性交渉のパートナーの数減少、初体験の年齢の上昇、コンドームの使用の増加など、性行動の変化が示すデータが出てくるなど、「限定的だが明るい兆しもある」と話した。

そんな中、感染者への差別と偏見はいまだに大きな障害だ。会場からの感染検査の義務化の提案に対してピオット氏は、人権面からばかりでなく、「感染者を地下に潜らせ逆効果で機能しない」と批判した。

ゲスト / Guest

  • ピーター・ピオット / Peter Piot

    国連合同エイズ計画事務局長 / Secretary-General, UNAIDS

研究テーマ:HIV/エイズ

研究会回数:18

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