2004年12月15日 00:00 〜 00:00
井上誠一・厚生労働省保険局企画官「社会保障改革」1

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会見リポート

スウェーデンの年金改革

小畑 洋一 (読売新聞社会保障部長)

公的年金の一元化が課題になる中、全国民が所得比例の年金制度に加入するスウェーデンの仕組みは、日本の抜本改革のモデルケースとして注目されている。この日の研究会で、スウェーデン大使館に勤務した経験がある井上企画官は、現制度と旧制度の比較、改革の背景とポイント、日本との国情の違い、政策決定プロセスなどについて詳細に解説。「政治家が決断し、国民への説明責任を果たすことが、大きな制度改革には欠かせない」と指摘した。

興味深かったのは、日本では困難と言われる所得捕捉のシステム。国民総背番号制があり、子どもが生まれると税務署に出生届を提出、この時に決められた番号が公共サービスの利用や金融取引時に必要で、金融所得がわかるようになっている。自営業者らの事業所得の把握に役立つのは、25%にのぼる付加価値税の公正さを担保するためのインボイスで、取引内容を詳細に知ることが可能。一方、税も保険料も税務署が一体で徴収するため、「保険料未納は脱税と同じ」という意識が国民の間に強く、正確な申告につながっているという。

自営業者も含めて一元化された年金制度は、こうしたシステムのもとに成立しているわけで、日本で実現するには時間がかかるのではないか。

また、スウェーデンの年金改革の主役が政治家たちだったのは有名な話だが、一度成立した5党合意に、与党・社民党内で批判が集中、白紙に戻そうという動きがあったにもかかわらず、執行部がねばり強く説得、実現にこぎつけたというエピソードも面白い。危機意識を共有した政治家たちが、ワーキンググループで改革の詳細を決め、最後までリーダーシップを貫いた姿勢は、見事だった。

ゲスト / Guest

  • 井上誠一 / Seiichi Inoue

    厚生労働省保険局企画官 / Insurance Department, Ministry of Health, Labour and Welfare

研究テーマ:社会保障改革

研究会回数:1

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