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3・11から2年:風化させない決意(2013年3月) の記事一覧に戻る

被災地と政治の温度差を埋めたい( 西日本新聞社 池田 郷)2013年3月

東日本大震災の1カ月後、福島に入った。海沿いのまちで、がれきの山に言葉を失った。色も匂いもしない放射能におびえる暮らしのやるせなさを知った。

 

東京に戻り、被災地と政治の現場にある温度差を書こうと決めた。「福島の再生なくして日本の再生はない」。口先だけの「復興」が永田町、霞が関に飛び交っていた。政争に明け暮れる与野党を被災地はどう見ているのか。復興はなぜ進まないのか―。被災地と国政の現場を「二元中継」するワッペン「政治不全」を展開した。

 

震災1年の節目には、連載「首都群像―3・11 あの日から」に取り組んだ。都心から福島へ向かうバスの人模様を見続けている女性、放射線の不安を口にできない主婦、帰宅困難となり「守るべき家族」に気づいた男性…。被災地と首都圏、そしてわれわれが拠点とする九州。それぞれの間に震災の受け止め方に差があり、時とともに広がっている。その現実にあらがおうともがいた。

 

折に触れ、被災地で知り合った人からのメールが届く。「被災地を忘れないで」。最近、こんなメッセージが増えている。心に刻みたい。

 

(東京支社官邸クラブキャップ)

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