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未来に向けて切るシャッター(共同通信社 鹿野修三)2013年3月

東日本大震災の発生直後から写真取材を続けているが、目の前の山の大きさを痛感する日々だ。

 

もうすぐ2年を迎える被災地。津波に破壊された沿岸部を初めて訪れ「もっと復興していると思った」と驚く人が多いという。メディアが伝える「復興」情報から思い描くイメージと現状との間にギャップが生じているのだろう。いまだ仮設住宅などで生活する人たちが置き去りにならないよう丁寧な報道を心掛けなくてはいけないと感じている。

 

また、取材にあたる際に「以前にも報じた」と既視感を覚えることも多い。新しい、明るい話題につい目を奪われる事実もある。そこをどうするか。ただ取材するだけでなく深さや切り口を変える努力をしたい。私は、自分の感性の「風化(鈍化)」を一番恐れている。

 

今、立ち上がる人たちの支えになれるか。将来の被災者が一人でも多く助かるための情報を残せるか。そこが問われていると思う。

 

近年、記録媒体の性能は飛躍的に伸びている。震災経験のない数十年後の世代の目に堪えうるものを刻みたい。

 

最近は「未来の人にも見せる」ことも意識しながらシャッターを切っている。

 

(仙台支社編集部写真担当)

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