2026年03月13日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「イスラエル・米の対イラン攻撃 背景と影響」(2) 齊藤貢・元駐イラン大使、関西学院大学客員教授

会見メモ

2018年から2020年に駐イラン大使を務めたほか、外交官としてサウジアラビア、イスラエルに駐在した経験を持つ。中東の中でも特にペルシャ湾情勢を専門とする齊藤貢さんが、米とイスラエル、イランそれぞれの戦略とその思惑、今後の見通しなどについて話した。

「最高指導者を殺され、面子をつぶされたイランはガソリン高騰作戦によりトランプを追い詰めたいと思っているだろう」「トランプの一方的な勝利宣言による幕引きシナリオはイランが停戦条件を公表したことで道をふさがれた」と解説。「いずれか一方の弾薬が尽きるまでの消耗戦に移行しつつある」。

アメリカとイスラエルが画策しているとされる内乱シナリオについては、①全国規模の反政府組織は存在しない②体制崩壊後の受け皿がない②イランの大多数の国民は、治安が混乱するよりは体制支持に回る可能性がある――という3つの理由から、「可能性は低い」とした。

イランの最高指導者にハメネイ師の次男、モジタバ師が選出されたことの意味を「宗教的な権威はなく、ベストな選択肢ではなかった。イスラム革命体制という形式を残しつつ、事実上、革命防衛隊による軍事独裁国家に変質したのではないか」と読み解いた。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

「弾切れ」まで続く消耗戦

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社客員論説委員)

 イラン攻撃で始まった動乱を語るにこれほどの適任者はいない。

 エジプト、サウジアラビア、イスラエル、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)で勤務し、オマーン、そしてイランで大使を務めた。この豊富な中東経験が言葉に重みを与える。

 初戦から「形勢を逆転させた」イランの狙いを鋭く分析した。斬首作戦で体制崩壊を狙われ、ホルムズ海峡の封鎖という虎の子の石油戦略を発動したのだが、より怖いのはアラブ産油国のエネルギー・インフラへの攻撃だ。復旧に時間がかかり、深刻な経済危機を起こすからだ。

 アラブ産油国への報復攻撃はUAEとバーレーンに集中している。両国は極端に都市部に人口が集中し被害が大きい。また巨大テックのデータセンタ―があるためこれを破壊することでAI依存の米軍の作戦を狂わせる、との見立てだ。

 イランはモジタバ師を最高指導者に選出したが、革命防衛隊の推しがあっての就任だ。事実上の軍事独裁国家への変質を意味するという。

 さて、今後の展開はどうだろう。米軍が侵攻する大規模な地上戦は、その準備に手を貸す国がなく難しい。イラン国民の体制への支持率は20%とも言われるが、国内で民衆蜂起を起こす工作にはイラクやシリアの長い内戦の惨状を知るイラン人は消極的で乗ってこない。

 石油価格の高騰に悲鳴を上げる世界は米国が一方的に勝利宣言をして幕を引けばよい、と考えがちだ。だが、再攻撃されない、ウラン濃縮の権利保証などメンツの回復をイランが求めて報復を続けるだろう。

 出口がない。結局どちらかの「弾切れ」まで戦争が続く消耗戦である。「イランは大胆な譲歩で米国との関係を改善する」という長期目標は、テヘラン特派員OBである筆者も期待する。問題は、米国をその気にさせる機運を国際社会がどうつくるかだろう。


ゲスト / Guest

  • 齊藤貢 / Mitsugu SAITO

    元駐イラン大使、関西学院大学客員教授 / former ambassador to Iran

研究テーマ:イスラエル・米の対イラン攻撃 背景と影響

研究会回数:2

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