2025年01月20日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「トランプ2.0」(3) 田村堅太郎・地球環境戦略研究機関(IGES)気候変動とエネルギープログラムディレクター

会見メモ

地球温暖化対策に後ろ向きとされるトランプ大統領の就任式を半日後に控える中、地球環境戦略研究機関(IGES)気候変動とエネルギープログラムディレクターの田村堅太郎さんが登壇した。

第1期政権時に米国はパリ協定から離脱。その後のバイデン政権で復帰したものの、第2期で再度離脱する可能性が高いといわれる。第2期政権で米国のエネルギー・環境政策はどう変わるのか、特にバイデン政権の最大の成果とされ、実質的な気候変動法にも位置付けられるインフラ投資雇用法とインフレ抑制法の廃止・見直しを進める上でネックとなること、米国の政策転換が国内外に与える影響などについて詳説した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)


会見リポート

エネルギー構造転換の流れ変わらず

大場 あい (毎日新聞社くらし科学環境部)

 気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」が掲げる1.5度目標実現に向け、世界は「勝負の10年」の真っただ中にある。第1次トランプ政権下で、温室効果ガス排出大国の米国が気候変動対策に背を向けたという事態を世界は経験済みだが、この時期の第2次政権発足に、田村氏は「第1次よりも影響の深刻度は大きい」と懸念を示す。

 バイデン政権は気候変動対策を最優先課題と位置付けていたが、トランプ氏は気候変動は軽視・無視し、「掘って掘って掘りまくれ」の言葉通り、化石燃料の増産をてこにし経済成長や雇用促進を図ろうとしている。会見の半日後、大統領に就任したトランプ氏は「米国のエネルギーを解き放つ」とうたった大統領令でエネルギー資源開発を妨げる規制の見直しなどを指示した。

 それでも、再生可能エネルギー拡大など市場の原理で動き出している米国内のエネルギー構造転換の流れは変えられないという。米国の排出削減傾向は続くとみられる。

 米国のパリ協定再脱退で政府間交渉のけん引役は不在になり、途上国への資金支援など、国際協調に影響が出る可能性は否めない。だが、協定の下で国際社会は既に化石燃料からの脱却に合意している。田村氏は「トランプ政権が協定に残り、(多国間の)議論をブロックするよりはましではないか」と話す。

 各国は「トランプ後」である2035年までの新たな排出削減目標を国連に提出するという段階に入った。日本も法律で50年までに脱炭素社会の実現を目指すと定めており、その目標は揺らがない。田村氏は「日本を含む世界各国は、米国内の政治サイクルに惑わされずに、地球温暖化を止めるには早期に排出を減らす必要があることを肝に銘じて行動することが重要だ」と強調した。


ゲスト / Guest

  • 田村堅太郎 / Kentaro TAMURA

    地球環境戦略研究機関(IGES)気候変動とエネルギープログラムディレクター / Director of Climate and Energy Area Institute for Global Environmental Strategies (IGES)

研究テーマ:トランプ2.0

研究会回数:3

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