会見リポート
2025年01月21日
13:00 〜 14:30
9階会見場
「2025年経済見通し」(1) 河野龍太郎・BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト
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会見リポート
大企業の賃上げ消極「長期停滞の元凶」
井上 勝則 (共同通信社経済部)
政財界の大きなテーマである賃上げへのメッセージは明快だった。日本は過去25年、生産性が3割上昇したにもかかわらず、実質賃金は上がっていない、むしろ下がっている—。もうかっても内部留保としてため込み、賃上げや国内投資に消極的だった大企業の経営者が日本の長期停滞の元凶だと論破した。
大企業の賃金をベンチマークとする中小企業、非正規雇用も低く抑えられてきた。こうした「収奪的なシステム」を改め、分配政策を見直すことが日本を成長軌道に乗せる近道ではないかと問題提起した。
賃金が増えないから消費が伸びない、国内売り上げが増えないからコストカットに走る。「合成の誤謬」が日本の実質為替レートを切り下げ、四半世紀前にタイムスリップしたかのように財・サービス価格が低いと分析。これに引きつけられたインバウンド(訪日客)需要にも「喜んでいる場合ではない」と危機感を示したのには合点した。
政治にも視点を広げた。大企業の長期雇用制の枠外で定昇の恩恵がない労働者は賃金が伸びなくても、これまでは物価安で生活を維持できたが、足元では円安インフレで苦境に陥っている。昨秋の衆院選で与党が過半数割れしただけでなく、“ポピュリズム”政党の台頭を招いた原因の一つではないかと指摘した。
少数与党の政権下では昨年11月にまとめた経済対策のように拡張的な財政運営に陥りやすい。ただ、完全雇用に近い現状のマクロ環境ではインフレを高める要因だ。日銀の緩やかな利上げペースで円安が止まらず、政府は物価高を和らげようと追加財政措置を取りかねないと警告した。
2025年春闘は前年に続いて高水準の賃上げ率が見込まれ、低賃金構造にメスが入り始めた。理由がどうであれ、この継続こそが日本経済を根本的に変える一里塚になるとの思いを強くした。
ゲスト / Guest
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河野龍太郎 / Ryutaro KONO
BNPパリバ証券経済調査本部長・チーフエコノミスト / Chief Japan Economist, Head of Economic Research, BNP Paribas Securities
研究テーマ:2025年経済見通し
研究会回数:1