会見リポート
2024年08月07日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「変わる『家族』」(3) 藤森克彦・日本福祉大学教授、みずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員
会見メモ
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は今年4月に公表した「日本の世帯数の将来推計」では全世帯に占める一人暮らし(単独世帯)の割合は2050年に4割を超えると推計した。少子高齢化と未婚化が進む中で、特に高齢者の一人暮らしが急増するとされる。
『単身急増社会の衝撃』(日本経済新聞社、2010年)の著者で、独居高齢者の問題に詳しい日本福祉大学教授でみずほリサーチ&テクノロジーズ主席研究員の藤森克彦さんが、家族形態の変容と身寄りのない高齢者への支援の実態と課題について話した。
司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)
会見リポート
身寄りなき老後 どう支援
山田 道子 (毎日新聞出身)
藤森氏の専門は「ひとり暮らしの研究」。父親の介護が大変で、「ひとり暮らしの人はどうなのか」と関心を抱いたのがきっかけと明かした。
今回のテーマも「単身世帯の増加と身寄り問題」。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、65歳以上で単身は2020年に738万人だったのが、50年には1084万人と1・47倍になる。藤森氏は「今後、高齢者の未婚化が進む。『未婚』は子どもがいないことが考えられるので『身寄りのない高齢者』が増えていく可能性がある。いかに『支え合う社会』を作るかがテーマになる」と問題提起した。
なぜか、が日本的だ。藤森氏は「福祉国家の3類型」に関する先行研究を引き、日本は「家族依存型福祉国家」であると指摘。「政府や市場ではなく日本は福祉に果たす家族の役割が大きい。しかし、身寄りのない高齢者は、『日常生活支援』『身元保証』など従来家族が提供してきた支援はない。人生の最終段階の支援をいかに確保するかが課題になる」として、地域包括支援センターや自治体の支援、身元保証団体が広がっていることを紹介した。恥ずかしながら、買い物支援や入院手続きから遺体の引き取りまでをする身元保証団体について初めて知った。2023年時点で約400以上。高額な料金の妥当性や死後の契約履行のチェックがないなど信頼性の担保に乏しい面もあり、24年には国のガイドラインが定められたという。
「変わる『家族』」①で落合恵美子・京都産業大教授が「これからは家族以外のセクターでケアをシェアすることが大事だ」と話していたが、藤森氏の話と呼応した。家族がいてもいなくても、誰もが「身寄りのない高齢者問題」をわが事とすべきだと痛感した。家族やコミュニティーとほとんど接触のない「社会的孤立」の割合は男性の方が高いそうだ。仕事一筋できた男性は特に要注意では。
ゲスト / Guest
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藤森克彦 / Katsuhiko FUJIMORI
日本福祉大学教授、みずほリサーチ&テクノロジーズ 主席研究員
研究テーマ:変わる『家族』
研究会回数:3