2023年11月08日 16:00 〜 18:50 10階ホール
試写会「ヤジと民主主義 劇場拡大版」と会見

会見メモ

2019年7月15日、安倍晋三首相(当時)の遊説中に政権批判の声を上げた市民を警察官が移動させた「ヤジ排除問題」を、4年間にわたって追及したドキュメンタリー。北海道放送が2020年に放送して多くの賞を獲得したドキュメンタリー番組に、当事者および専門家たちへの取材を加えた劇場版。

 

上映後、山崎裕侍監督とジャーナリストの青木理さんが対談。その後、会場からの質疑に応じた。

 

※対談と質疑応答の動画は、こちらからご覧いただけます。


会見リポート

排除 許しているのは誰か

伊藤 智永 (毎日新聞社専門編集委員)

 「アベやめろ」。札幌市で2019年参院選遊説中の安倍晋三元首相に叫んだ男性が、警察官に力ずくで聴衆からつまみ出された。「増税反対」と声を上げた女性も追い出された。日本は公道で演説する政治家に異論をぶつける自由もないのか。

 いわゆる「ヤジ排除問題」の真相と波紋を、北海道放送(HBC)報道部取材班は4年間追い続けた。ニュースや特集番組で放映した映像の他に、知られざる排除事例を発掘し、劇場拡大版のドキュメンタリー映画にまとめた。生身の政治参加の意義と弾圧の歴史も考察する。

 ニュースでは知り得なかった現場の様子、政治に意見を届けたい人々のやむにやまれぬ動機や心情が丁寧にすくい取られる。個々の意思が素朴なだけに、不釣り合いに過剰な警備は、異常さを超えて、もはや滑稽に見える。北海道警が裁判用に、現場の再現映像を撮影するシーンなど思わず失笑が漏れていた。罪のないプラカードまで制止する様は、中国公安のデモ統制にそっくりだ。

 二人が排除される様子は、一般の聴衆も撮影していた。取材班はそうした映像を丹念に探し、何が、どう行われたのかを多角的に構成してみせる。初めは周囲の無関心さに気をもむが、沈黙する市民は単なる傍観者ではなかったと気づかせてくれるのも、この映画の功績だろう。

 試写会後の対談で、公安担当記者経験もあるジャーナリストの青木理さんは「警察権力が深々と突き刺さった安倍政権の末端で起きた病理の一例だ」と指摘。HBC報道部デスクの山﨑裕侍監督は「私たちが排除を許しているのではないか。ストやデモやヤジを迷惑と思う人たちにこそ見てほしい」と語った。全国の公安警察官たちもぜひ見てほしい。


ゲスト / Guest

  • ヤジと民主主義 劇場拡大版

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