2023年10月02日 13:00 〜 14:00 10階ホール
フィリップ・ラザリーニ国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長 会見

会見メモ

中東のパレスチナ難民に教育や医療などを提供する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に対して、日本が支援を開始してから今年でちょうど70年を迎える。

来日したフィリップ・ラザリーニ事務局長が会見し、財政危機が深刻化している現状を説明するとともに、パレスチナの人々の未来を考えてほしいと訴えた。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 池田薫 サイマル・インターナショナル


会見リポート

「見捨てられた」広がる絶望

菅野 麻衣子 (共同通信社外信部)

 日本が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に支援を始めて今年で70年になる。来日したラザリーニ事務局長は、日本の長年の支援に謝意を示すとともに「平和からこれほど遠のいたことはない」と現状への危機感を示し、パレスチナ問題の政治的解決に向けて国際社会が動くよう求めた。

 UNRWAはヨルダン、シリア、レバノン、ヨルダン川西岸、ガザ地区の難民キャンプを中心に暮らすパレスチナ難民とその子孫を支援する国連機関だ。支援内容は医療や食料、教育などの提供から難民キャンプのインフラ改善など多岐にわたる。ラザリーニ氏は「政府のような運営を求められる一方、財政面はドナー国の善意で成り立っている」と強調。1949年のUNRWA設立から間もなく75年を迎えるが「パレスチナ問題がこの間ずっと解決していないことを意味する」と述べた。

 ロシアによるウクライナ侵攻もUNRWAの活動に影を落とす。食料やエネルギー価格が高騰し、支援の質を落とさざるを得ないという。ラザリーニ氏は、パレスチナ難民への関心が薄まり、各国の支援が届きにくくなっているとも指摘。米国ではトランプ前政権で支援が一時打ち切られており、各国の内政に左右される状況を憂慮した。難民は「世界に見捨てられた」と絶望感を持っているとし、継続的な支援を訴えた。

 このほかラザリーニ氏は会見で、日本にUNRWAの関連拠点を設立する意向も表明。実現すればアジア初となり「民間との協力にも期待したい」と意欲を語った。

 会見から1週間たたないうちに、ガザを実効支配するハマスとイスラエル軍の大規模戦闘が起こった。情勢は混乱し、戦闘の長期化も予想される。イスラエル軍はガザを封鎖し、深刻化するガザの人道危機は連日トップニュースで報道されている。一刻も早い停戦や情勢安定化に向け、メディアができることを考えたい。


ゲスト / Guest

  • フィリップ・ラザリーニ / Philippe LAZZARINI

    国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長 / Commissioner General, the United Nations Relief and Works Agency for Palestine Refugees in the Near East

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