2022年10月18日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「日本の安全保障を問う」(1) 遠藤乾・東京大学大学院教授

会見メモ

日本の外交・安全保障政策の長期指針となる国家安全保障戦略など3文書が年末に改定される。

日本の安全保障はどうあるべきかを、多角的かつ深く掘り下げて考える新シリーズ「日本の安全保障を問う」の第1回ゲストとして、遠藤乾・東京大学大学院教授が登壇。各国の動向を解説するとともに、軍事的合理性と政治的理性の両立に向け日本の安全保障はどうあるべきなのかについて話した。

 

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

機能する防衛へ資源集中を

池内 新太郎 (日本経済新聞社論説委員兼編集委員)

 新たな安全保障戦略の策定と防衛力の抜本的強化をめぐる政府・与党の検討作業が進んでいる。「日本の安全保障を問う」をテーマとした会見のトップバッターとして登壇した遠藤乾氏が強調したのは「軍事的合理性」と「政治的理性」に沿ったリアルな議論の必要性だった。

 当たり前のように聞こえるが、目的はあくまで「真に機能する防衛力の整備」であり、再確認すべき論点を提起したと言えよう。

 政府・与党の議論で大きな焦点となっているのが反撃能力保有の是非である。報道も含め、専守防衛との整合性や発動の要件など法理的な側面に関心が集まりがちだ。

 遠藤氏は反撃能力の保有について「心から賛成はできない」と表明した。理由に挙げたのが、他国に対する脅しとなり「逆機能」する可能性や抑止という概念自体への懐疑、限られた資源の振り向け先としての優先度の低さなどだった。

 日本は中国、ロシア、北朝鮮という3つの核保有国に近接している。長射程のミサイルを保有したとしても、核ではない通常弾頭で「相手を抑止することが本当にできるのか」と疑問を投げかけた。

 そのうえで力説したのが、抑止のような「あやふやなもの」ではない「きちんと機能する防衛力の整備」だった。手痛い打撃を相手に与える能力の整備にこそ、貴重な資源を振り向けるべきだと指摘。陸上自衛隊などを大幅に再編し、米海兵隊との連動性を高めて、南西諸島防衛を強化することを例示した。

 いずれも評価の分かれる点だろう。ただ「何から何を守るのか」という「具体的な防衛構想こそ必要」という指摘に異論はあるまい。防衛力強化は継続的な取り組みが必要であり、透明性を確保しながら国民の理解を求めていくことが重要だ。その意味でも、こうした根本的な議論を深掘りする意義は大きいと感じた。


ゲスト / Guest

  • 遠藤乾 / Ken ENDO

    東京大学大学院教授 / professor, graduate school of public policy, university of Tokyo

研究テーマ:日本の安全保障を問う

研究会回数:1

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