会見リポート
2021年04月05日
16:00 〜 17:00
10階ホール
「ジェンダーと政治」中貝宗治・豊岡市長
会見メモ
人口減少対策として、ジェンダーギャップの解消に取り組む兵庫県豊岡市の中貝宗治市長が登壇し、この間の経緯や市の現状、今後の課題などについて話した。
司会 佐々木美恵 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)
「ジェンダーと政治」(全5回を予定)
(1) 3月4日(木)14:00~15:00 三浦まり・上智大学教授
(2) 3月19日(金)16:00~17:00 伊藤公雄・京都産業大学教授
(3) 3月22日(月)16:30~17:30 前田健太郎・東京大学大学院准教授
(4) 4月5日(月)16:00~17:00 中貝宗治・豊岡市長
会見リポート
「ジェンダーギャップ解消」を地方創生のカギに
稲澤 裕子 (読売新聞出身)
兵庫県豊岡市は今春、市立小学校を統廃合し、地方創生が最大の課題だ。「人口規模は小さくても世界の人々から尊重される」「小さな世界都市」を目指し、①コウノトリの野生復帰に象徴される環境対策②インバウンドの促進・カバン生産拠点による経済活性化③演劇のまち作りによる文化的魅力作り――に取り組んできた。中貝宗治市長はこれらに加えて、「ジェンダーギャップの解消」を地方創生の柱とする挑戦を紹介した。
豊岡に暮らす価値が「とりわけ若い女性に選ばれていない」ことが判明したのは2017年。2015年国勢調査の結果、10代で市を離れた若者が20代で帰郷する「若者回復率」が、男性は52.2%へとV字回復したのに対し、女性は減り続けて26.7%と大幅な「男余り」で、そのまま進めばまちが消滅しかねない。
分析した原因が「男社会」にあった。豊岡市では男女の平均収入の差は年齢とともに拡大する。女性は補助的な仕事にしかつけず、結婚、出産で仕事をやめると、非正規にしかつけない。市役所も女性管理職比率は19年度9.3%と低く、女性部長が「どれほどいろいろなものを断念してきたか」と話すのを聞いたとき、中貝市長は「フェアプレーではなかったことを思い知った。この言葉が、私のエネルギー」と語る。
「女性にとって不公平な壁」を取り払うべく、まず、「働きやすい」だけでなく「働きがいがある」職場作りに動いた。ワークイノベーション戦略を策定し、経営者、人事担当者セミナーで「無意識の偏見」に気づく意識改革を進め、女性たちにはリーダーシッププログラムで自信を高め、コワーキングスペースやビジネス相談窓口を設置して起業を支援する。市役所の女性管理職比率は21年度16.9%に、男女ともに働きやすさと働きがいが高水準の企業を「あんしんカンパニー」と認定する市独自の制度を設け、初の認定企業も誕生した。
職場改革の実績を踏まえて3月に「ジェンダーギャップ解消戦略」を策定し、4月に開設したジェンダーギャップ対策室を司令塔に実行していく。
人々の意識を変えることは容易でない。「『一歩ずつ、一歩ずつ』、小さくてもいいから成功例を示していく」。他者への共感の欠如にも言及する中貝市長の言葉に、政治に血が通っていることを感じた。豊岡市の課題は、ほとんどの地方都市に共通している。市長は譲るが、継続と成果に期待したい。
ゲスト / Guest
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中貝宗治 / Muneharu Nakagai
兵庫県豊岡市長 / Mayor of Toyooka, Hyogo Prefecture
研究テーマ:ジェンダーと政治
研究会回数:4