会見リポート
2021年03月22日
16:30 〜 17:30
オンライン開催
「ジェンダーと政治」前田健太郎・東京大学大学院准教授
会見メモ
著書『女性のいない民主主義』(2019年、岩波書店)で、男性支配の政治がもたらす問題と向き合うことの重要性を指摘した前田健太郎・東京大学大学院准教授が、留学中の韓国からリモートで登壇。「女性のいない民主主義」とは何か、そこに至る歴史的経緯、日本が抱える固有の課題などについて話した。
司会 小栗泉 日本記者クラブ企画委員(日本テレビ)
※ゲストの意向により本会見の動画はYouTubeに公開しません。
「ジェンダーと政治」(全5回を予定)
(1) 3月4日(木)14:00~15:00 三浦まり・上智大学教授
(2) 3月19日(金)16:00~17:00 伊藤公雄・京都産業大学教授
(3) 3月22日(月)16:30~17:30 前田健太郎・東京大学大学院准教授
(4) 4月5日(月)16:00~17:00 中貝宗治・豊岡市長
会見リポート
問われる各政党の候補者選定/クオータ制で「人事構造」の打破を
北村 節子 (読売新聞出身)
市町村議会から国会まで、日本の女性議員が世界のレベルに比べて非常に少ないことを指し、前田氏は「それで民主政治と言っていいのか」と問いかける。
「民主政治とは何か」、思考が重ねられてきた歴史を紹介した上で、アメリカの1920年の女性参政権の実現には第一次世界大戦という事情があった、と解説する。時のウィルソン大統領の「参戦には女性国民の協力が必要」との判断だ。が、当初、男性のみの議会選挙でありながら、敵国ドイツに対しては、「カイザーの専制から解放する」と主張していたことについて、女性からは「矛盾だ」との糾弾があったという。すでに、「外交・政治・経済の戦略として女性を活用する」のか、「人権として参政権を認めるのか」という、今日にもつながる課題が見て取れる。
日本でも、婦選運動家の市川房枝が戦時中、国策委員を歴任した件は「婦人の政治参加への途として進めてきた」と見られている。参政権と国策協力は国家、女性、双方にとっての戦術のツールでもあった。
アメリカで「幅広い参加がある政治ほど価値がある」というポリアーキー定義が広く共有されるようになったのは、公民権運動、ウイメンズリブやフェミニズムの高揚を経た1970年代になってからだ。
では今日の日本は? 女性の代表が衆院で一割に満たないその背景として氏は、議会の要職には経験者がつくという「人事の構造」を挙げる。「当選を重ねてこそ大臣」では、若い日から議席を持つ二世、三世男性が有利。結果、女性が関心を持つ課題は見過ごされ、女性議員が増えない。これを打破するには候補者のクオータ制が有効であり、各政党の姿勢が問われる、との見解だ。
3年前に成立した政治における男女共同参画推進法を受け、各政党がどんな候補システムを導入するか、次の選挙の見どころだろう。
ゲスト / Guest
-
前田健太郎 / Kentaro Maeda
東京大学大学院准教授 / Associate Professor, University of Tokyo
研究テーマ:ジェンダーと政治
研究会回数:3