2021年03月04日 14:00 〜 15:00 オンライン開催
「ジェンダーと政治」三浦まり・上智大学教授

会見メモ

森喜朗氏の発言は日本社会の様々な分野で男女格差(ジェンダーギャップ)が根強くあることを浮き彫りにした。中でも政治分野では、2018年5月に男女共同参画の推進に向けた法律が施行されたが、衆院議員の女性比率が9.9%にとどまるなど、遅れが際立つ。

シリーズ企画「ジェンダーと政治」では、学識者や格差是正に向けた取り組みを進める団体などに日本の現状、課題について聞く。

第一回ゲストとして、三浦まり・上智大学教授がリモートで会見。クオータ制と日本の課題などについて話した。

司会 伊藤雅之 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

「ジェンダーと政治」(全5回を予定)

(1) 3月4日(木)14:00~15:00 三浦まり・上智大学教授

(2) 3月19日(金)16:00~17:00 伊藤公雄・京都産業大学教授

(3) 3月22日(月)16:30~17:30 前田健太郎・東京大学大学院准教授

(4) 4月5日(月)16:00~17:00 中貝宗治・豊岡市長

(5)4月12日(月)16:00~17:00 全国フェミニスト議員連盟


会見リポート

クオータ制、男女均等の梃子に

長友 佐波子 (朝日新聞出身)

 すでに世界130カ国近くが、政治分野でクオータ制(女性の議員や候補者の最低割合を定める差別是正措置)を導入している。おかげで20年前には1割以下だった各国の下院議員の女性比率は、昨年には4~3割に上昇した。縛りの厳しいメキシコではほぼ半数(48.2%)に達し、先進国では日本だけが低水準を続けている(9.9%)。

 こんなデータを、三浦まり・上智大学教授はまず示した。海外で女性議員比率を改善させたクオータ制だが、あくまでも手段だと強調する。目的は、女性議員を増やして、議会に多様性を生むこと。意思決定の場も、人口比同様に男女半々で、男女共同参画の民主主義であるべき──というパリテ(性別均等)の原則を推進するのがクオータ制だ。

 三浦教授と毎日新聞社が2年前に国会議員に調査したところ、適切な女性議員比率は43%と、パリテへの理解は男性にも広がっていた。一方、教授の別の調査では、支持政党別で、自民や維新支持の男性に、制度導入への反対が多かったという。また大卒男性も反対が顕著で、いま理由を調査中という。

 男女雇用機会均等法施行から30年以上たつ今でも、各界で意思決定過程にいる女性は少ないままだ。いまだ女性には、出世を阻む「ガラスの天井」や、火中の栗を拾わされ、危ない地位を押しつけられて使い捨てにされる「ガラスの崖」がある。

 低賃金、ハラスメントや暴力被害などジェンダー不平等はほかにも多い。クオータ制によって女性議員がまず増えることが、レバレッジポイント(梃子の力点)になる――連鎖反応的に改革を起こす出発点になる――と、三浦教授は期待する。

 自ら法制化に関わった候補者男女均等法(2018年施行)については、「○年までに□%」といった数値目標の設定と義務化が次の目標という。教授は最後に、国民の理解を深めるための更なる報道をと切望した。


ゲスト / Guest

  • 三浦まり / Mari Miura

    上智大学法学部地球環境法学科教授 / professor, Department of Legal Studies of the Global Environment, Faculty of Law, Sophia University

研究テーマ:ジェンダーと政治

研究会回数:1

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