会見リポート
2021年03月19日
16:00 〜 17:00
オンライン開催
「ジェンダーと政治」伊藤公雄・京都産業大学教授
会見メモ
男性学などを専門する伊藤公雄・京都産業大学教授がリモートで会見。
世界がジェンダー平等に動く中、日本が出遅れたのは、「男性は長時間労働、女性は家事・育児という『日本特有のジェンダー構造』で安定成長を遂げた成功体験に縛られたため。男性主導の『同調型集団主義』の存続も一因」と説明。
「下駄を履いてきた男性が『下駄を脱げ』と言われ続けることで『剥奪感』が生まれている」。ジェンダー平等が広がる中で男性の意識改革を支える政策の重要性も指摘した。
司会 礒崎由美 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
「ジェンダーと政治」(全5回を予定)
(1) 3月4日(木)14:00~15:00 三浦まり・上智大学教授
(2) 3月19日(金)16:00~17:00 伊藤公雄・京都産業大学教授
(3) 3月22日(月)16:30~17:30 前田健太郎・東京大学大学院准教授
会見リポート
男性に「下駄脱がされる」恐怖
石田 敦子 (毎日放送東京支社報道部次長)
これまでジェンダー平等については女性の視点から発信されることが主だったが、今回は「男性学」の視点ということが最大のポイント。
日本の現状は、ジェンダーギャップ指数が153カ国中121位など大幅に遅れていることは広く報道されている。しかしこれまで国や社会がその対策に本腰を入れていたとは言い難い。伊藤氏はその背景に「1970~80年代に男性の長時間労働と女性の家事育児等の仕組みで達成された成功体験」があり、それによって生まれた「企業、官僚、政治組織という社会の広い分野における男性主導のボーイズクラブ主義」が変化を阻んできたと解説する。
しかしジェンダー平等が世界的潮流となるにしたがって、男性には今まで履かせてもらっていた下駄を脱がされるという恐れが生まれつつあるという。伊藤氏はこの現象を「剥奪の男性化」と名付け、社会的マジョリティーの立場を剥奪されると感じる男性へのケアの必要性も説く。
男性の意識変革はジェンダー平等にとって不可欠である。伊藤氏は男性が「気づき→ジェンダー平等の認識を深める→家事・育児・介護などを体験→さらなる気づきを得る」というサイクルを体験することを「政策的」に推し進める必要性を訴える。
女性登用が「アリバイ作り」などと陰で揶揄されるような女性活躍政策の一方で、男性が実体験を積める環境も整えられてこなかった。女性蔑視発言を海外から厳しく指摘された今年2月までジェンダー問題をおざなりにしてきた政財界の責任は重い。
最後に伊藤氏は剥奪感を乗り越える術として「無自覚に背負い込んでいる男性という鎧を脱ぐと楽になる」と語った。ジェンダー不平等のあおりを受ける男性も少なからずいる。性別にかかわらず自分らしくいられるという理想を絵に描いた餅に終わらせないためにも、今訪れている変化の波を逃してはならない。
ゲスト / Guest
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伊藤公雄 / Kimio Ito
京都産業大学現代社会学部現代社会学科教授 / Professor, Kyoto Sangyo University
研究テーマ:ジェンダーと政治
研究会回数:2