2020年12月01日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「デジタル庁とマイナンバー」(4) 三木由希子・情報公開クリアリングハウス理事長

会見メモ

デジタル庁の創設と合わせ、マイナンバーの利活用拡大が検討されている。

三木理事長はマイナンバーカードへの一体化の動きについて「この間も志向されてきた政策だが、これまで政府はおそるおそる足を踏み出していた。だが新型コロナがアクセルとなり、社会も背中を押している。政府はやりたいことをやれる状況になっている」と指摘。「マイナンバー制度、デジタル化はあくまでも手段。目の前の便益のみを強調するのではなく、デメリットも示したうえでの公正、透明な議論が必要」と強調した。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画員(NHK)

 

シリーズ「デジタル庁とマイナンバー」

(1) 11月4日(水)13:30~15:00 向井治紀・内閣官房番号制度推進室長

(2) 11月11日(水)13:30~15:00 梅屋真一郎・野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長

(3) 11月27日(金)16:00~17:30 スウェーデンの個人番号制度


会見リポート

透明性確保、権利保障が大前提

浜田 陽太郎 (朝日新聞社編集委員)

 これまでは、恐る恐る足を踏み出していたマイナンバーやマイナンバーカードの活用。それが、コロナ禍に背中を押され、政府がやりたいことができるようになっている。政府はひたすら「便利で効率的になります」とメリットを連呼し、アクセルは全開。でも、負の側面はないのか? リスクが顕在化したとき、ブレーキはかけられるのか?

 市民の知る権利の確立をミッションに掲げるNPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、こんな問いを立てた。2015年10月、いわゆる「マイナンバー法」が施行された際にも、「透明性の欠如したマイナンバー利用議論は公正性を欠いている。そのことそのものがプライバシーへの脅威だ」という声明を発表している。

 許容されやすい範囲で制度を導入し、国民に慣れてもらう。経済的メリットや利便性の向上というインセンティブで徐々に利用を広げていく。だが、その先には公正で人権が尊重される社会が実現する保証はどこにもない。

 マイナンバー制度も、それを活用したデジタル化も、あくまで手段である。より公正な社会を実現するのか、国民の権利はより保障されるのか、マイナンバーはそのために役に立つのか、といったポイントこそ、議論すべき対象であるはずだと説いた。

 司会者はこんな質問をした。マイナンバーを銀行口座にひも付けるだけでなく不動産登記でも活用して資産を把握、「応能負担」を徹底するために活用すべきではないか。人口減少社会で公正な負担と給付を実現するインフラとして欠かせないと、政府は正直に言うべきではないか――。これに対して、三木氏は、効率的な社会保障の運営は必要としながらも、行政の透明性の強化、本人の権利保障とセットでなければならないと述べた。政府がそれをどこまで本気でやるのか見えてこないのに、個人情報の連携と流通が拡張していくのは問題があると指摘した。


ゲスト / Guest

  • 三木由希子 / Yukiko Miki

    日本 / Japan

    情報公開クリアリングハウス理事長 / Chairperson, Access-Info Clearinghouse Japan

研究テーマ:デジタル庁とマイナンバー

研究会回数:4

ページのTOPへ