2020年11月27日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「デジタル庁とマイナンバー」(3) スウェーデンの個人番号制度

会見メモ

スウェーデンの個人番号制度(英:personal identity number)は1947年に導入され、60年代後半にはすでにデジタルデータ化が始まっていた。出生の際に付与されるもので、社会保障や公共サービス、公的機関の利用、銀行口座の開設から民間サービスの利用まであらゆる場面で必要になる。この制度の設計や運用について、インゲヤード・ヴィデル国税庁事業開発担当官、ソフィー・アンカルクローナ=テリーン・インフラ整備省デジタル社会局顧問、ローゲル・ファーゲルード・インフラ整備省デジタル行政部門(DIGG)シニアストラテジストが話した。また、スウェーデン在住の高橋佳代さんに、住民としてこの制度をどう感じているか、日本との違いを交えて聞いた。

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

 

写真左からヴィデル氏、アンカルクローナ氏、ファーゲルード氏、高橋氏。


会見リポート

制度の仕組みを解説/国税庁が所管、バンクIDで制度が円滑に

後藤 直久 (日本経済新聞社編集局マネー報道部)

 会見ではまず、国税庁のヴィデル氏が個人番号制度の導入の経緯と付番など基本的な仕組みを説明した。

 個人番号制度は1947年に導入され、91年に国税庁の所管となった。10桁から成る個人番号は生年月日や性別などを基に国税庁が付与。具体的には子どもが生まれると病院が国税庁に連絡。同庁は番号を付与し、病院経由で両親に伝える。番号とともに集まる情報には、氏名、住所、出生地、未婚・既婚の別、既婚の場合は配偶者、子どもなどの氏名、所有不動産、死亡後の埋葬場所などがある。国税庁が関係当局に情報を適宜配分するなどの役割を担う仕組みを紹介した。

 次にスウェーデンのデジタル戦略の立案を担うインフラ整備省のアンカルクローナ氏とファーゲルード氏が発表。ともに「自分が自分であることを証明する本人確認(ID)が重要である」と強調した。IDは「不正やエラーから個人を保護する」(アンカルクローナ氏)からだという。

 スウェーデンで個人が対象となるIDは3つあるが、ファーゲルード氏は「民間が開発したIDを公共サービスでも使うところにスウェーデンの特徴がある」と指摘。これにより政府が自らIDを作るよりも円滑に進んだという。中でもバンクIDは政府がスペックを大手銀行に提供することで開発され、国民の84%以上が保有する。公的サービスの申請だけでなく、民間取引でも頻繁に使っているという。

 バンクIDは個人番号と紐づいた預金口座を保有することにより取得する。バンクIDでも不正が全て防げるわけではないが、アンカルクローナ氏は「電子文書に電子署名することにより不正は起きにくくなる」と強調した。

 4年前にスウェーデンに移住した高橋氏は育児休暇日数の取得申請や会員制店舗での個人番号の利用の実際を自分のケースで詳細に紹介した。「個人番号なしの生活は社会保障を受ける権利を放棄するのと同じだ」と語ったのが印象的だった。


ゲスト / Guest

  • インゲヤード・ヴィデル / Ingegerd Widell

    スウェーデン国税庁事業開発担当官 / Business Development Officer, Swedish Tax Agency

  • ソフィー・アンカルクローナ=テリーン / Sophie Ankarcrona Thelin

    スウェーデンインフラ整備省デジタル社会局顧問 / Advisor, Division of Digital Society, Ministry of Infrastructure

  • ローゲル・ファーゲルード / Roger Fagerud

    スウェーデンインフラ整備省デジタル行政部門(DIGG)シニアストラテジスト / Senior IT-strategist, Agency for Digital Government (DIGG)

  • 高橋佳代 / Kayo Takahashi

    スウェーデン在住 / resident of Sweden

研究テーマ:デジタル庁とマイナンバー

研究会回数:3

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