2020年11月11日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「デジタル庁とマイナンバー」(2) 梅屋真一郎・野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長

会見メモ

国内の自治体や諸外国・地域のコロナ対応を例に、デジタル化の課題を指摘した。マイナンバーの利用は「2023年頃にはかなり便利になると期待される」としつつ、プライバシーに関する市民の懸念をどのように払しょくするかなどを課題に挙げた。デジタル庁に関しては、国民・企業など、利用者・利害関係者の視点で司令塔となる人が必要だとし、官民の連携を視野に入れるべきだと述べた。梅屋氏は政府のIT総合戦略本部新戦略推進専門調査会マイナンバー等分科会の構成員として、マイナンバーの制度設計に携わった。『マイナンバー国家改造計画』(2015年、日経BP)、『これだけは知っておきたい マイナンバーの実務』(2015年、日経文庫)ほか著書多数。 各種制度分析を専門とし、2013年4月から現職。

経歴(野村総合研究所未来創発センター ウェブサイト)

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

シリーズ「デジタル庁とマイナンバー」

(1) 11月4日 向井治紀・内閣官房番号制度推進室長


会見リポート

デジタル政策、「利用者視点が重要」

松倉 佑輔 (毎日新聞社経済部)

 「マイナンバーの伝道師」として、多数の著作がある梅屋氏。政府が推進するマイナンバーカードの普及とデジタル庁の創設について、現状と今後のポイントを語った。

 新型コロナウイルスの政府対応を巡っては、特別定額給付金の給付の際に自治体によって混乱があった。梅屋氏はこの点を振り返り「政府に人間はミスをするという前提が足りなかった」と指摘。「想像力の欠如」があったと述べた。

 マイナンバーカードについては、年末調整や保険料控除などの手続きの簡素化を例に挙げて「2023年ぐらいにはかなり便利になる」と期待。一方で「申し込みと受け取りに手間と時間がかかる。何カ月待ちという自治体もある」と交付が追いついていない現状を指摘。月々の発行枚数に上限もあることから「年間に配れる枚数はせいぜい4000万」として、国民全体に行き渡るには「2年以上」かかるとの見通しを示した。

 そのため「カードを持ちたくても持てない方がいる」として「サービスをどんどん提供したいが、持っていない人の不便も極力避けなければならない」と政府のジレンマを指摘。「両立は悩ましい問題」と国の立場を代弁した。

 デジタル庁については「予算や権限をどこまでデジタル庁が管轄するか」によって「絵姿が相当変わってくる」と指摘。政府は国と地方のシステムを抜本的に見直すことを掲げているが、これらの市場規模は「2兆円」にも上るとして、IT関連市場に与えるインパクトの大きさについても語った。

 最後に、デジタル政策の課題として「利用者視点がやはり抜けている」と改めて指摘。対応策として、国民にメリットを示すため「KPI」(成果指標)導入の必要性を提唱。また、デジタル庁で採用される民間人材について「利用者視点での司令塔がチームに必要」と強調。「民間を巻き込む」ことの重要さを訴えた。


ゲスト / Guest

  • 梅屋真一郎 / Shinichiro Umeya

    日本 / Japan

    野村総合研究所未来創発センター制度戦略研究室長 / General Manager, Policy System Innovation Department, Center for Strategic Management & Innovation, Nomura Research Intitute

研究テーマ:デジタル庁とマイナンバー

研究会回数:2

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