会見リポート
2018年07月26日
15:00 〜 16:30
9階会見場
「朝鮮半島の今を知る」(13)米朝首脳会談以後の北東アジア秩序と日韓関係 陳昌洙・世宗研究所日本研究センター長
会見メモ
司会 箱田哲也・朝日新聞論説委員
会見リポート
国益見据え、日韓で新たなルール作りを
近藤 浩 (北海道新聞社東京支社編集局長)
史上初の米朝首脳会談からまもなく2カ月。しかし、肝心の北朝鮮の「完全な非核化」に向けた歩みは停滞している。陳氏は「今の段階で失敗だったかどうかを判断するのはまだ早い」と指摘した。
つまずきの原因は何か。陳氏によれば、北朝鮮はすでに核実験場を破壊して見せ米国に譲歩したと思っているし、一方、米国も米韓軍事演習を中止し、首脳会談を受け入れたこと自体が譲歩と認識している。このため、双方が「次は相手がどう出るか」と神経戦になっていると分析した。
突破口となるのは、今年で休戦から65周年にあたる朝鮮戦争の「終戦宣言」を行うことだと、陳氏は主張する。国連総会のある9月末までにできるかどうか。韓国政府は積極的に推進しているという。
ただ、終戦宣言をしたとしても、その後の道のりは必ずしも平坦ではない。韓国政府は、南北の軍事境界線に張り付く軍隊を南に後退させて信頼を醸成したい考えだが、在韓米軍の存在意義にもかかわり、米国は慎重だ。「これから在韓米軍のあり方について議論が本格化してくる」と予想した。
では、日韓関係はどうあるべきか。
米朝首脳会談後の国際情勢は米中対立という二つの陣営に分けられた構図ではなく、互いに利益を求めて複雑化していく。陳氏は「北東アジアの新しいルールを日韓が一緒に作るべきだ」と強調する。
陳氏は、韓国がかつてのようには日本を重要視せず、日本も歴史問題で韓国への不信感を募らせていることを憂慮。しかし、「国益はどこにあるのか、日本と韓国がもう一度考えるときだ」とみる。
今年は1998年の小渕恵三首相と金大中大統領による「日韓パートナーシップ宣言」から20年の節目にあたる。たとえば、「共通の課題である少子高齢化に両国が手を組んで取り組むのはどうか」とアドバイスする。互いに利益を追求することが、対立を乗り越えていく上で重要だということだろう。
ゲスト / Guest
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陳昌洙 / Jin Chang Soo / 진창수
世宗研究所日本研究センター長 / Director, Center for Japanese Studies, Sejong Institute
研究テーマ:朝鮮半島の今を知る
研究会回数:13