会見リポート
2017年11月16日
15:20 〜 16:20
9階会見場
アシム モルディブ外相 会見
会見メモ
日本との外交樹立50周年で来日。年間120万の観光客が訪れる島嶼国。「国際空港などのインフラを拡張し560万人まで受け入れたい」。国土の多くが標高数メートル以下で温暖化による海面上昇で水没の懸念もあり、パリ協定を批准、太陽光・水力発電にも取り組む。
司会 石川洋 企画編集専門委員(日本記者クラブ事務局)
通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)
写真左から カリール二国間協力担当官、アシム外相
会見リポート
観光立国と気候変動、明暗が交錯
八牧 浩行 (時事通信出身)
モルディブは、スリランカ南西のインド洋に浮かぶ約1200の島から成る、人口40万人足らずの小国。透明なコバルトブルーの海が広がる人気の観光スポットだが、会見では直面する厳しい課題と明るい展望が交錯した。
最大のリスクは地球温暖化による影響。海抜の最高が2.4メートルという平坦な地形であるため、海面上昇と珊瑚礁の死滅により、国土が消滅する危機にさらされている。
「気候変動問題は世界共通の課題。米国も大型ハリケーンの襲来など影響を受けている」と指摘。「モルディブは44カ国で構成する小島嶼連合の議長を務めており、パリ協定を最初に批准した。国の大小を問わず世界全体が取り組むべきだ」と同協定離脱方針を通告した米国を批判した。自助努力の一環として太陽光・風力発電にも力を入れる。
主力産業は観光業で、最大の外貨獲得源。100余りのリゾート島が、中国、日本、米国、欧州、中東などから多くの観光客を引きつけている。現在の観光客数は年間120万人と人口の3倍に達するが、「国際空港などのインフラを拡張し500万人以上を受け入れたい」と期待は大きい。「日本の皆さん、もっと観光に来てください」と呼びかけた。
一人当たりの国民総生産(GDP)は1万ドル超。南アジア地域では最も高く、「後発開発途上国(LDC)から脱皮し『中進国』の仲間入りを果たした」と胸を張る。同時に「(先進国レベルの)経済協力開発機構(OECD)基準に従って資金調達しなければならないので、大型プロジェクトにはいかなる国からも資金を受け入れている」と説明。念願の大規模商業港の建設プロジェクトでは「複数のパートナーと交渉中」という。
地政学的に大国に影響されやすい場所に位置しているため、最近日米などが打ち出した「インド太平洋戦略」を歓迎する一方、中国主導の「一帯一路(海と陸のシルクロード)構想」にも言及。「中国との経済協力は非常に強力だ」とし、首都のマレにある空港の滑走路拡充や空港とマレ市内を結ぶ橋の建設に中国が支援していると明かした。
もう一つの主要産業は漁業。最大の事業所であるマグロ缶詰工場は日本の国際協力機構(JICA)などの支援で建設され、ヤンマーの協力でエンジン付の漁船が増えたという。「カツオブシは14世紀にモルディブで始まり、15世紀に日本に伝わった。モルディブでは、カツオブシはあらゆる料理に使われている」との話も興味深かった。
気候変動に抗いつつ、美しい自然と治安の良さを売り物に「観光立国」を世界にアピール。外国からの支援を全方位で受け入れ、したたかに発展を目指す小さな海洋国家の今後が気になった。
ゲスト / Guest
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モハメド・アシム / Mohamed Asim
外相 / foreign minister
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アハメド・カリール / Ahmed Khaleel
外務省二国間協力担当官 / Secreary, Bilateral, the Ministry of Foreign Affairs