2017年01月06日 14:00 〜 15:30 9階会見場 
「トランプ政権:米国と世界の行方」(1)クリスティーナ・デイビス 米プリンストン大学教授

会見メモ

トランプ企画第一弾。「トランプ氏が公約を全部実現するとは思わないが、自由貿易協定反対と対中強硬姿勢は維持する可能性は高い」「メキシコ工場建設でトヨタは譲歩する必要なし。多国籍企業がトランプ流の規制を嫌い米国から脱出する懸念もある」

 

司会 軽部謙介 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

通訳 大野理恵(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

反中国、反FTAは変わらない

服部 健司 (時事総合研究所代表)

米大統領選の衝撃が世界を駆け巡り、トランプ、トランプで暮れた2016年。明けて最初の会見(1月6日)イベントにこのテーマが取り上げられたのは当然の選択だった。1月20日、いよいよトランプ政権が発足する。その外交・通商政策が東アジアにとってどんな意味を持つことになるか、デービス教授が語った。

 

なにしろ「予測不能」が身上のトランプ氏。人々を驚倒させた選挙公約の数々をどれだけ額面どおりに実施するか、本人以外の誰にもわからないが、デービス教授は「トランプ氏の信条に心から共鳴する人物がアドバイザーや閣僚候補に指名された」ことから、就任後の穏健化には悲観的だ。特に「中国への強硬姿勢」と「反FTA(自由貿易協定)の立場」は変わらないと予測する。

 

では、トランプ政権下で米中関係はどうなるのか。日本にとっても最大関心事のひとつだ。デービス教授は「経済と安保の対立が重なっていくだろう」とし、危機のエスカレートを警告した。1980年代の米国ならば、安保上のライバルはソ連、経済上のライバルは同盟国日本だったが、いまではどちらも中国である。トランプ氏は蔡英文台湾総統と電話で話し、「一つの中国」原則に縛られない考えを示している。こうした外交・安保対立も背景に「米中貿易戦争が起きる可能性が高い」という見立てだ。

 

その通商政策では保護主義が貫かれるのか。そうだとしても、中国の巨大化によりアジア域内貿易が増え、米市場依存度は相対的に低くなったから「アジア諸国は80年代ほどの打撃を受けないのではないか」という。グローバル企業は「トランプ政権の言うことを全て聞いてまで米市場にこだわらずとも、グローバル市場に向かえばよい」と明言。質疑応答で、トランプ氏のツイッター攻撃を浴びたトヨタへのアドバイスを求められた際も、同趣旨の考えを述べた。柔軟で爽快な発想だ。

 

柔軟と言えば、「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ氏が「国際秩序を揺さぶった上で、リーダーシップを発揮して秩序再構築に向かう」可能性も、歴史に照らせばあり得るとしたことは、目配りの利いた知見として印象的だった。


ゲスト / Guest

  • クリスティーナ・デイビス / Christina Davis

    米国 / USA

    米プリンストン大学教授 / Professor of Princeton University

研究テーマ:トランプ政権:米国と世界の行方

研究会回数:1

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