2016年10月27日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「海外に住む日本人と複数国籍」会見

会見メモ

重国籍を認めない日本の国籍法が、父母の国籍が違う家庭にどのような問題をもたらしているのか。独仏在住の2人が自らの体験に基づき具体的に説明。「子供にとって両親の祖国はどちらも大事。国籍放棄はアイデンティティーの半分を奪う」「多様な日本人は国際化時代に重要」
(壇上左から武田里子さん、ピレー千代美さん、トルン紀美子さん)
司会 中井良則 日本記者クラブ顧問


会見リポート

二重国籍を認めない日本 閉じた制度に苦しむのは子ども

中井 良則 (日本記者クラブ顧問)

結婚も子どもも減り続ける日本だが、日本人と外国人の国際結婚は30件に1件を占め、国際結婚の両親から生まれる子どもは毎年、2万人前後いる。出生数は年間約100万人なので2%、つまり50人に1人は両親の2つの国籍を持って育つことになる。ところが日本の国籍法は二重国籍を認めない。「国籍は日本だけ」という多数派の日本人が見過ごしてきた国籍法の矛盾点を国際結婚の当事者が問いかける会見となった。

 

トルン紀美子さん(ドイツ在住)は海外に住む日本人にとっての問題点を3つ挙げた。

 

まず、子どもの出生から3カ月以内に日本国籍の留保届を出さないと、国籍を失う制度。日本国内なら14日以内の期限を過ぎても出生届を受け付ける。しかし、外国で生まれただけで拒否される。「せめて1年以内に延ばしてほしい」

 

第2に国籍を2つ持つ場合、22歳までにどちらかの国籍を選択する制度。選択しなくても法務大臣の催告は一度も行われていない。複数国籍を維持している例も多い。「人によって差が出るのは不公平。機能していないのなら削除してほしい」

 

第3は外国籍を取得すると日本国籍を自動的に失う規定。仕事のため外国籍を必要とする日本人は国籍放棄を強いられる。「海外で働く人材を日本から切り離そうとする」

 

フランス在住のピレー千代美さんは2人の子どもを育てた体験を語り「父か母かどちらかの国籍を踏み絵のように選ばせる。多様な背景を持つ『日本人』が増えることは日本にとってプラスなのに」

さらに武田里子・大阪経済法科大客員研究員は研究者の立場から「形骸化した制度を維持しても弊害は多い」と強調し、二重国籍子弟の日本留学支援を提唱した。

 

生まれ育ったアイデンティティーを取り上げる。グローバルな活躍を排除する。閉じた法制度に苦しむのは子どもたちだ。


ゲスト / Guest

  • トルン紀美子さん / ピレー千代美さん / 武田里子・大阪経済法科大アジア太平洋研究センター客員研究員 / Kimiko Thorn / Chiyomi Pillet / Satoko Takeda, Visiting Researcher, Osaka University of Economics and Law

研究テーマ:海外に住む日本人と複数国籍

ページのTOPへ