2016年04月26日 15:00 〜 16:30 9階会見場
「金正恩体制をどうみるか-労働党大会を前に」平井久志 立命館大学客員教授

会見メモ

共同通信のソウル支局長、北京特派員などを務めた平井久志 立命館大学教授が、金正恩体制について分析し、記者の質問に答えた。
司会 山本勇二 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

北朝鮮、党大会も成果は望めず

山本 勇二 (企画委員 東京新聞論説委員)

北朝鮮は核実験をしミサイルの発射を続けるが、国威発揚の総仕上げになるのが5月6日開幕の労働党大会だ。36年ぶりの党大会で、何が討議され、決定されるのか。

 

党大会は軍、地域、職域の代表が参加する、最も権威がある会議であり、ここで「金正恩時代」が公式にスタートする。父の金正日総書記は「先軍政治」を掲げたが、正恩氏は党に権力を一元化させ、軍を指導する体制をめざしている。実際に政策を立案、遂行する党の部長や副部長たちは40~50代が中心となり、世代交代がかなり進むとみられる。

 

核開発を続けながら経済発展もめざすという並進路線を、いっそう強く打ち出す。北朝鮮は現実には南北共存の道を進んでいるのだが、党大会では新たな南北統一の構想が発表されよう。平穏な時なら、韓国側も統一構想をテーマにした対話に前向きになるが、軍事的脅威が高まっている現状では、朴槿恵政権は南北和解の動きには応じないだろう。

 

1990年代半ばの飢餓の時代に小規模な市場(いちば)が各地にできた。今や全国に拡大し、国家の経済はかなりの部分を市場の活動に頼っている。個人の所有権はともかく、用益権を認めるような新しい経済政策が提示されるのではないか。

 

全体的に見て、準備不足を押して開催する党大会は成果に乏しいものになるだろう。年初からの核、ミサイル実験の成果を強調して、「対米勝利」の宣言ばかりが目立ち、中国など友好国の代表団が来ず、国際的な孤立の中で内向きの大会になる可能性が高い。

 

以上が共同通信のコリアウオッチャーとして活躍した平井さんの、労働党大会についての見立てである。北朝鮮の公式報道は特有のレトリックで書かれるので、予備知識がないと何が大事なのかわからない。平井さんの発言と的確にポイントをまとめたレジュメは、党大会のニュースを理解するのに必ず役立つはずだ。


ゲスト / Guest

  • 平井久志 / Hisashi Hirai

    日本 / Japan

    立命館大学客員教授 / Visiting Professor, Ritsumeikan University

研究テーマ:金正恩体制をどうみるか-労働党大会を前に

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