2014年12月12日 14:00 〜 15:30 10階ホール
渡辺靖 慶応大学教授 「戦後70年 語る・問う」⑨

会見メモ

渡辺靖慶大教授が「アメリカにとっての『戦後』とは何か」と題して話した。

 

司会 会田弘継 日本記者クラブ企画委員長(共同通信社)


会見リポート

アメリカにとっての「戦後」とは何か

吉田 弘之 (毎日新聞・アジア調査会)

日本国内では今年迎える「戦後70年」に向け、次世代へ記憶を継承する作業が始まっている。一方で、米国にとって、この70年はどういう意味を持つのだろう。米国は第2次世界大戦後、ベトナム戦争、東西冷戦、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、そしてイラク戦争と、さまざまな戦争を経験し「複数の戦後」がある。「テロとの戦い」でいまも「戦中」にあり、当然日本とは温度差がある。

 

とは言っても、第2次世界大戦は現代の米国を考えるうえで重要な起点となっている。渡辺さんはその思想的な源流を「黄金の1950年代」に求める。特徴は白人主流の「古き良きアメリカ」、「反共・自由主義圏の盟主」としての「超大国」の確立などだ。その反動として60年代に公民権運動や保守主義が芽生えた。70年代には「50年代へのノスタルジア」として宗教右派や新自由主義、新保守主義が出現した。

 

そしていま、超格差社会の誕生、党派政治への不信、世界の多極化を迎え「50年代に回帰するのか、そのバージョンアップを求めるのか」、米国は岐路に立っているという。

 

米国に「日本の戦後」がどう見えるのか、米国側の視点も紹介した。冷戦期に左派を警戒した米国はいま、逆に存在感を増す右派を警戒している。理由は2つ。現在の右派の言説は、米国が構築した戦後世界秩序を否定しかねない。また、靖国問題などに見る歴史認識問題が中国を利することになるという危機感だ。

 

渡辺さんは、戦後70年の節目となる2015年に安倍首相が訪米する際は「日本の首相として初めての米議会演説を実現してほしい」と熱く語った。実現の前提条件は、慰安婦問題の「河野談話」の継承や日韓関係改善の意思を明確にすることなどだろうと予測する。

 

米政治、社会を深くウオッチしている研究者ならではの冷静な助言と受け止めたい。


ゲスト / Guest

  • 渡辺靖 / Yasushi Watanabe

    日本 / Japan

    慶応大学教授 / professor, Keio University

研究テーマ:戦後70年 語る・問う

研究会回数:9

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