2011年05月20日 15:00 〜 16:00 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」「復興構想会議への要望・提言」黒川清 政策研究大学院大学教授

会見メモ

黒川清・政策研究大学院大学教授(前日本学術会議会長、日本医療政策機構代表理事)が東日本大震災と福島原発の対策・復興について話し、原発危機への国際委員会設立を呼び掛けた。


≪風評被害の解消のためにも、政府の外に独立した国際委員会を作るべきだ≫


黒川さんは大震災で日本の強みと弱みが明らかになったと切り出し、現場の強さと比べて政治のガバナンスやリーダーシップがない、と苦言を呈した。日本の国際的な信頼を取り戻すためにも、原発危機対策と放射能の環境影響を評価分析する国際委員会の設立を訴えた。国際委員会は日本側の委員は少数派とし、日米で運営機関を作る。原発施設と放射能影響の二つの専門委員会を作り、風評被害の最小化と解消をめざす。外国からみると、日本が何をしているのかわからないのが問題、と指摘し、日本の経験と教訓を隠すのではなく世界の共有財産にするよう求めた。


司会 日本記者クラブ理事 宇治敏彦(東京新聞)


黒川清さんのオフィシャル・ブログ

http://www.kiyoshikurokawa.com/


会見リポート

国際的に説得力ある情報発信を

知野 恵子 (読売新聞編集委員)

なかなか収束しない東京電力福島第一原発事故。しかも、あとからあとから悪い話が出てくる。

 

事故の深刻度が、旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と並ぶ「レベル7」に引き上げられたかと思えば、事故発生後2カ月もしてから「炉心溶融(メルトダウン)が起きていた」。海水注入を巡って、「言った」「言わない」、「中断した」「中断していなかった」などの応酬も繰り広げられた。

 

黒川氏は、日本学術会議会長や内閣特別顧問などを歴任、学術と政府の場で仕事をしてきた。その両方について、「政治のリーダーシップや危機管理がない。学問の世界も自分の研究分野はよく知っていても、社会や世界に向けて話そうと意識している人は少ない。国の在り方の弱さがわかってしまった。日本の国際的信用はがた落ちになった」と、厳しく批判した。

 

日本への信頼を取り戻すためには、事故の原因を徹底的に解明し、今後の安全対策を確立する必要がある。黒川氏は、政府から独立した事故調査委員会を作り、委員に外国人を多数登用して、国際的に説得力のある情報を発信すべきだという。

 

政府が5月27日に発表した委員会のメンバーは全員日本人で、委員会も政府内に設置された。審議過程やデータの公開などを通じて、国際的信用を得ることが求められる。

 

重要なのは日本国内、特に一般の人々の思いにどう向き合うかだ。政府も電力会社も「日本の原発は安全」と言い続けてきた。「危険なものなど作るわけがない」と言い切る技術者もいた。それがこんな事態になった。事故収束のために、欧米の技術が次々と導入されるのを見聞きするにつけ、日本の技術では制御不能なのかと不安にもなる。これからどうやって日本は立ち直っていったらいいのか。その点についてももっと聞いてみたいところだ。


ゲスト / Guest

  • 黒川清 / Kiyoshi KUROKAWA

    日本 / Japan

    政策研究大学院大学教授 / Professor, National Graduate Institute for Policy Studies

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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