2024年07月17日 17:00 〜 19:00 10階ホール
2024年度日本記者クラブ賞特別賞 受賞記念講演会

会見メモ

2024年度日本記者クラブ賞特別賞を受賞した北海道放送ヤジ排除取材班とテレビ静岡「イーちゃんの白い杖」取材班の受賞記念講演会が行われた。北海道放送からは代表して山﨑裕侍さん(写真1枚目)が、テレビ静岡からは代表して橋本真理子さん(写真3枚目)と番組の主人公イーちゃんこと小長谷唯織さん(写真2枚目)が登壇した。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長

 


会見リポート

特別賞 北海道放送ヤジ排除取材班

(山﨑裕侍 北海道放送コンテンツ制作センター報道部デスク)

●「権力の監視」地方局が奮闘

 2019年の参議院選挙の応援で、札幌を訪れた首相の演説に「安倍、辞めろ」とヤジを飛ばした市民が、道警に排除された。山﨑裕侍さんら北海道放送(HBC)のチームが粘り強く取材、昨年は「ヤジと民主主義 劇場拡大版」も完成させた。裁判で、道警の行為は法的根拠に基づいたものと認められなかった。

 「当たり前のことをやっただけ」と山﨑さん。「受賞は、メディアの権力監視が弱まっていることの裏返しでは」と言う。警察の動きに疑問を持ち、番組をつくったことを高く評価したい。予算も人員も十分ではない地方局で、一つのテーマを追い続けるのは容易ではないだろう。

 話は別だが、東京・上野の国立西洋美術館で3月、ガザ攻撃に反対する美術家たちが展示会で抗議の声をあげた。すると私服警官が入ってきて制止、勝手に撮影を始めた。美術館側は「通報していない」と言うが、警察の振る舞いを全く問題にしない。複数の記者もいたが、法的根拠があいまいな警察の行為を批判する記事は出なかった。

 警察の横暴と腐敗は、全国で起きている。なぜ、中央のメディアは積極的に取材しないのか。刺激を受けた。

                              桜井 泉( 朝日新聞社オピニオン編集部 )

 

特別賞 テレビ静岡「イーちゃんの白い杖」取材班

(橋本真理子 テレビ静岡報道制作局長兼情報ニュース部長、小長谷唯織さん)

●「お互いさま」の世の中を

 全盲の「イーちゃん」こと唯織さんと、重度の障がいがある弟・息吹さん。家族の歩みを25年間、追った作品「イーちゃんの白い杖 特別編」は、海外の映画賞など7つの賞に輝いた。

 出会いは唯織さん8歳の時。「どうしたらこんなに明るい子が育つのか、家族に会いたいと思ったのが全ての始まり」。橋本さんの「スクープ」だった。

 障がいはかわいそう、という概念を変えたい。この家族はそれができる。そう信じ、本業の報道の傍ら、休みを使って取材。盲学校、成人式、全盲同士で結婚…。寄り添い、撮影を続けた。

 講演は対話形式で進んだ。「ここで地震が起きて真っ暗になったら、イーちゃんに連れてってもらわないと」「その時はサポートしますよ」

 全国の上映会へ2人で出向き、舞台挨拶を続けている。障がい者と健常者との対話。大切にしている活動だ。

 唯織さんは願いを語った。「困った時はお互いさま、の世の中にしたい。誰かを助けたり助けてもらったりすることは恥ずかしいことではない。それが本当の自立だと思う。助けていただいたら心からお礼を伝える。そうすることで皆が優しくなれると思います」

                      榎本 哲也(東京新聞編集委員・前中日新聞社静岡総局長) 

 


ゲスト / Guest

  • 山﨑 裕侍 / Yuji YAMAZAKI

    北海道放送コンテンツ制作センター報道部デスク

  • 橋本真理子 / Mariko HASHIMOTO

    テレビ静岡報道制作局長兼情報ニュース部長

  • 小長谷唯織 / Iori KONAGAYA

    番組主人公

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