2024年07月19日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「2024 米大統領選」(8) 冨田浩司・前駐米大使

会見メモ

バイデン政権発足後の2021年1月から2023年11月まで駐米大使を務めた冨田浩司氏が登壇。テレビ討論会とトランプ前大統領の暗殺未遂事件が選挙戦に及ぼす影響、今後の選挙戦をどのように見ているのかを中心に話した。

研究会は、共和党の全国大会で党の大統領候補に正式に指名されたトランプ前大統領が指名受諾演説をしたその直後にスタートした。暗殺未遂事件はトランプ前大統領のパブリックイメージを「既存の政治手法にチャレンジするアウトサイダー」から「分断を超え、これからの国をまとめるリーダー」へとリセットするきっかけになったと指摘。受諾演説については「過激な民主党攻撃はトーンダウンしている。いまやこの国をリードするのは我々という自信にあふれていた」と印象を語った。

民主党の指導部からもバイデン大統領を候補から降ろす動きがでていることについては「ある程度の確率で(バイデン大統領が)撤退を決断する可能性はある」とした。

 

司会 菅野幹雄 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

接戦の構図に大きな転機

菅野 幹雄 (シリーズ担当企画委員 日本経済新聞社論説委員長)

 冨田氏は昨年11月まで駐米大使を務めた。「引退したので、できるだけ率直にお話ししたい」と切り出す。資料が届いたのは会見開始の1時間前。前週末に起きたトランプ前大統領の暗殺未遂事件、会見直前に終わった米共和党大会でのトランプ氏による指名受諾演説をギリギリまで見極めようとする誠意を感じた。

 米大統領選は相当な接戦を予想していたが、直近1カ月の2つの事件で「転機が訪れている」という。

 ひとつは両候補のテレビ討論会。昨秋の日米首脳会談に同席した時に比べても、バイデン大統領は「加齢が進んだのか調子が良くなかったのか、残念なパフォーマンスだった」と観察した。民主党指導部の働きかけで「最終的に撤退を決断する可能性はある」と、2日後の撤退表明を先取りした。

 第2の事件はトランプ氏への暗殺未遂だ。政治的な影響として、共和党内の求心力が強まる、対バイデン氏で強さを際立たせられる、民主党の対トランプ攻撃が鈍る、そしてトランプ氏が結束のリーダーとして印象を刷新する機会になるとの4点を指摘した。

 トランプ演説を総括して「共和党はいまやトランプの党だ」と明言した。若いJ・D・バンス氏が副大統領候補になり「米国を再び偉大に」の頭文字をとるMAGAがトランプ氏の「瞬間芸」から将来に続いていく体系に様変わりすると見通した。

 現時点で「トランプ氏の優位は否めない」とみた。民主党の望みは東部ペンシルベニア州での勝利にかかると指摘した。のちにハリス副大統領の出馬が固まったが、基本的な課題は同じだろう。

 トランプ氏復帰に日本はどう構えるか。新政権と強いパイプを築き「我々の関心を適宜適切に伝えていく」のが肝要と説く。大使時代の実感として「日米関係は超党派で非常に強い支持がある。継続性は期待していい」とも付け加えた。


ゲスト / Guest

  • 冨田浩司 / Koji TOMITA

    前駐米大使 / former ambassador to USA

研究テーマ:2024 米大統領選

研究会回数:8

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