2024年07月23日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「中国で何が起きているのか」(16) 阿古智子・東京大学大学院教授

会見メモ

反スパイ法の改正から今年7月で1年がたった。中国共産党は自国民だけでなく、外国人に対する統制も一段と強化しており、人権状況が改善する兆しはない。

中国の政治・社会変動、農村や知識人の動向を研究してきた東京大学大学院教授の阿古智子さんが、中国における人権状況や、日本で暮らす中華系移住者の動向と展望、日本としてどう支援していけばよいのかなどについて話した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

自由な言論 日本が拠点に

中澤 穣 (東京新聞政治部)

 会見の力点は、「日本が中国とどのように向き合うべきか」にあった。ベテラン記者が目立った会場の聴衆に向け、阿古智子教授はすこし挑発的に呼びかけた。「私たちはこの30年を振り返らなければならない。中国の何を見てきたんですかと」

 背景には、中国が習近平政権下でさらに統制が強まり、特に言論の自由が失われていく現状への憤慨と焦燥がある。恒例の揮毫は「自ら思考し行動する人間が世界をつくる」。その心を「中国共産党政権のもとで人間が人間らしく思考し、行動できなくなっている」と説く。さらにそうした中国に対する日本の立ち位置を問い、「ある意味で一緒につくってきた。天安門事件の後にどういう対応をしたのか」「中国はひどい国だねって涼しい顔をしているだけでいいのか」と訴えた。

 強い言葉は自身の実践と表裏一体でもある。中華圏から多くの研究者や人権派弁護士、ジャーナリスト、MeToo運動の当事者などを東京大に受け入れ、自宅の一部も宿舎として提供する。たとえば現在、「70歳すぎの有名な知識人」が東京に滞在中という。この知識人が講演会を開けば毎回300人が集まり、大部分が中国人の会場からは質問が途切れない。「日本が言論の拠点になっているから。中国で議論できないことが日本だったらできる」

 自由を求める中国人知識人のネットワークや商業圏が確立しつつあり、「自由経済=Freedom Economy」という言葉も紹介した。中国で禁止されている音楽や映画、トークショーが日本で開催され、訪日する中国人は少なくない。

 とりわけ知識人にフォーカスして支援する政策を求め、「自由と民主主義、法の支配を推進する移住者サポート」を提起する。増加する在日中国人を巡る議論は、経済的な側面や好き嫌いに終始しがちだが、欠かせない視点だと感じた。


ゲスト / Guest

  • 阿古智子 / Tomoko AKO

    東京大学大学院教授 / Professor.Graduate School of Arts and Sciences, Tokyo University

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:16

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