会見リポート
2024年07月31日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「2024 米大統領選」(9) アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所(PIIE)所長
会見メモ
通商・マクロ経済政策の分析で知られる米ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のアダム・ポーゼン所長が“Japan's Role and Risks in the Post-American Global Economy”をテーマに登壇した。
司会 菅野幹雄 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)
通訳 西村好美 サイマル・インターナショナル
会見リポート
日本は複数国間主義追求を
寺本 洋子 (時事通信社外国経済部)
11月の米大統領選まで約3カ月。米ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長は選挙結果が同国や世界経済、そして日本にもたらす影響について、解説した。
ポーゼン氏は共和党候補のトランプ前大統領、民主党候補のハリス副大統領のどちらが勝利しても、米国の貿易や対中政策などに「大きな違いはない」との見方を示した。バイデン政権がトランプ前政権下で導入された貿易規制を維持し、さらに「対中や直接投資に関する規制を加えた」と指摘。ハリス氏が大統領に就任すれば、ロシアや中国に対する制裁の実施や輸出管理はトランプ氏が返り咲いた場合よりも、厳しいものになると予想した。
財政政策を巡っては、どちらの候補が大統領になっても、防衛や産業政策関連の支出拡大で「大きな財政赤字を抱えることになる」と説明。ただ、トランプ氏は大型減税の恒久化を公約に掲げ、さらなる減税にも意欲を示す。同氏が勝利すれば、米国の財政赤字はより拡大すると強調した。
外国為替相場に関しては、ドル高基調が続くと予測。生産性の伸びや関税政策、移民に対する規制といった要因でインフレが加速し、米連邦準備制度理事会(FRB)は「2025、26年には利上げに動かざるを得ない」などと背景を分析した。その上で「米政権は26年中には何らかの形で(ドルを)下げるよう動くとみている」とし、トランプ政権ならば、「第2のプラザ合意のようなものをつくろうとする」と見込んだ。
米中対立が今後も続く中で、日本が追求すべきは「原理原則に基づくプルリラテラリズム(複数国間主義)だ」と提言。包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)のモデルを新分野に応用し、同志国と「経済の相互関係を強化していく」。そうした取り組みが保護主義を強める「米国を関与させる唯一の道だ」と強調した。
ゲスト / Guest
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アダム・ポーゼン / Adam S. Posen
ピーターソン国際経済研究所(PIIE)所長 / President, The Peterson Institute for International Economics (PIIE)
研究テーマ:2024 米大統領選
研究会回数:9