2008年12月19日 00:00 〜 00:00
菊池修・写真家「HIV/エイズ」33

会見リポート

レンズを通して見た「怪物」

宮田 一雄 (産経新聞編集委員)

戦場や紛争地域の写真を撮り続けていた菊池さんが「日本のエイズ」に目を向けるようになったのは、2001年にイギリスの通信社から仕事の依頼を受けたのがきっかけだった。エイズの原因となるHIV(ヒト免疫ウイルス)に感染して、様々な日常を生きる人たちの姿を伝える国際的な写真展を開催するために「3カ月で日本のHIV陽性者を撮影してほしい」といわれた。

当時の日本で、それがいかに無理な注文であったか。ちょっと調べれば分かりそうなものだが、ただでさえ、文化的な理解力に限界のある欧米のジャーナリストにそんなことを言ってみても始まらないだろう。

菊池さんは病院やHIV陽性者を支援する非営利組織(NPO)などを訪れた。案の定どこでも冷ややかな対応を受け、「取材のためにHIV陽性者を紹介することはできません」と断られてしまう。

途方に暮れ、たまたま知人から紹介されたゲイ雑誌の編集者の長谷川博史さんに相談したところ、「僕なら撮影していいよ」と言われた。

「いや、私が撮りたいのはあなたでなく、HIV陽性者なんです」

「だから僕でいいじゃない」

それから7年間、長谷川さんを中心に撮影した7000枚の写真の中から、80枚を選りすぐってまとめた写真集が「Monster」だという。ひげ面に厚化粧をし、女装で詩を読む長谷川さんは確かに怪物的ではある。

だが、菊池さんによると「モンスターは長谷川さんではなく、僕なんです」という。もっといえば、差別や偏見が根強く残る社会ということにもなるだろう。

タイトルやテーマの性格上、社会的なメッセージ性の強い写真集と思われがちだが、会見では記者側から、映像の芸術的な質の高さを評価する発言も出ていたのが印象に残った。

ゲスト / Guest

  • 菊池修 / Osamu KIKUCHI

    日本 / Japan

    写真家 / Photographer

研究テーマ:HIV/エイズ

研究会回数:33

ページのTOPへ