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パキスタンの核の脅威(NHK解説主幹 山内聡彦)2005年3月

3月9日、私たちはデリーにある有力なシンクタンク・防衛調査分析研究所を訪問し、インドの対外戦略やテロ対策など安全保障問題について意見交換をした。

 

この中で、バスカル所長は、インドが安全保障面で多用な課題に直面していると述べ、特に隣国パキスタンがテロを支援し、核技術を他国に渡していたとして、その脅威を指摘した。同時に、そのパキスタンをはじめ、アメリカや中国ともこの数年間、関係改善を進め、グローバル化や安全保障のバランスを取りながら、現実的な外交を展開していることを強調した。

 

冷戦の終結やソ連の破壊を受けて、非同盟の盟主だったインドが今、経済成長を背景に、世界大国への仲間入りを目指していることをうかがわせる訪問だった。

 

3月11日には、南部バンガロールにあるインド宇宙研究機構を訪問した。インド側はここでは軍事目的ではなく、平和的な宇宙開発を行っていると述べ、この40年間に19回の打ち上げを行い、うち93年からの10回はすべて成功していると成果を強調した。

 

またインドの宇宙開発の特徴として、他国の協力なしに、すべて独自に開発された点を指摘し、地質や海洋の調査など、すべて国の需要に応じて宇宙開発を行っていると述べた。有人宇宙飛行や国際宇宙ステーション計画に参加するつもりはないものの、インド洋沖の大津波を受けて、津波の早期警戒システムへの参加を検討していることを明らかにした。

 

さらに、打ち上げコストが安いことを強調し、将来、衛星打ち上げ事業に参加する用意があると述べた。訪問は核保有国インドが進める独自の宇宙開発の実情への認識を深める良い機会となった。

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