ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。


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デリー五輪はいつ?(日本記者クラブ 石川洋)2005年3月

 

「インド人はスポーツにあまり関心ないよ。宗教の国だよ」。ガイドのカーンさんからこう聞いたとき、そうだろうな、と思わずうなずいた。国際スポーツ界でインド選手が活躍した、とは長い間聞いたことがない。アテネ・オリンピックでは銀メダル1つ。

 

中東、アフリカで人気のある空手や柔道の道場があるとも思えない。暑さのため、運動よりは瞑想ということなのだろうか。娯楽は映画一辺倒で、スポーツの出る幕がないのかもしれない。食うのが先決で、スポーツでは食えない、というのも根底にあるのだろう。

 

学校教育でも、スポーツの位置づけは低い。国内線でとなりになったNGOの教育関係者は、「田舎へ行けば先生が2、3人も珍しくなく、体育の先生がいるわけでもない。そこまで手がまわらないでしょう」という。

 

ただし、英国の置きみやげのクリケットは別格で、国民的な人気?を博しているようだ。たまたまパキスタンチームの宿泊するホテルでランチをとったのだが、ロビーにはプレス用の特設スペースがあり、記者が待機していた。テレビでは試合の生中継をし、新聞も写真入りで大きく扱っていた。

 

年平均5~6%の経済成長が今後も続き、中間層がさらに拡大し、施設が充実していけば、スポーツへの認識も変わるかもしれない。そのときスポーツは大衆化するだろうか。

 

経済で先行する中国への対抗心から、五輪の誘致もあり得るのでは、とふと思った。帰国後、在京インド大使館に問い合わせたら、北京の次の次の2016年に向け、すでにデリーが名乗りをあげているとのこと。実現したら、メダルをめぐり一喜一憂するのだろうか。

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