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佐賀新聞 丸田康循 2002年2月

佐賀にある世界的な釣り具のルアーメーカーがある。ここが工場を海外に移すというので、いまも労働争議が続いている。雇用の場がなくなるからだ。その工場の移転先は今回、視察したフィリピンだった。

 

地場企業だけでなく、地方にとっては、もともと誘致活動の末に迎えた大手企業の工場も多く、それらの移転は地域やそこに住む人たちの死活問題にもなりかねない。

 

産業の空洞化が加速する台湾ではそのあたり、どう対処しているのか知りたかったが、進出に慎重な声がある一方で、経済界のリーダーの1人が「水の流れには逆らえない」と強調していたのが印象的だった。ビジネスとはドライなものである。

 

企業進出を促す「安い労働力」。だが、いずれは生活水準が上がり、働く人たちの意識に芽生えてくるものがあるかもしれない。日本の賃金の十分の一で働くこれらの国々の人たちの「これから」が気になる。

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