取材ノート
ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。
熊本日日新聞社 浜田浩生 2000年12月
十人十色、いまは一人十色の時代とさえ言われるが、九州がひとつでないのと同じように東南アジアの顔も、それぞれだった。
通貨危機に対して、マレーシアがIMF提案を拒否したのは、マハティール首相の主体性の表れなのか。目まぐるしく変わる日本の首相と違って、在任期間は20年近くに及び、自信がにじみ出ていた。満身創痍のインドネシアのワヒド大統領は「あれも欲しい、これも欲しい」と日本などに支援を要求、したたかさとともに、一方では懐の深さも感じられた。
また、都市の表情を味に例えるならば、シンガポールはすまし汁か。ごった煮を思わせるようなジャカルタやバンコクは、熊本名物・だご汁だろう。独り歩きには緊張感も強いられたものの、親しみを覚えた。
駆け足の視察で、わけ知り顔はできないが、素晴らしい団員の方々に恵まれ、貴重な経験だった。