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「記憶の文化」に学ぶ(前田 克)2015年7月

国内では間接的にしか知り得なかった「ホロコースト」を直に学べたのが意義深かった。強制収容所やホロコースト記念館など展示施設への訪問、生存者の宗教指導者との面会など、多角的に取材することができた。600万という気が遠くなるほどの数の人間が殺されたという事実を直視し、「人はこんなにも残虐になるのか」と重い気持ちになったが、この国家的犯罪行為を胸に刻み込もうとする試みが今もドイツ国内で活発なことに少し救われる思いがした。被害者には一人一人に名前があり、生活があった。「躓きの石」は一方的にこの世から消し去られた被害者の存在証明と言えよう。かの地の「記憶の文化」から学ぶべきこと多々だった。

 

(熊本日日新聞論説委員)

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