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第13回(ドイツ・イスラエル)戦後和解(2015年7月) の記事一覧に戻る

収容所跡の静寂(小市 昭夫)2015年7月

ドイツは暑かった。特にあの日は―。ドイツ滞在最終日の7月5日、ベルリン北部のザクセンハウゼン強制収容所を訪ねた。門扉の飾り文字「ARBEIT MACHT FREI(働けば自由になる)」、その向こうに東京ドーム82個分の敷地が広がる。監視塔から見やすいように建物が放射線状に並んでいたという敷地を歩く。真ん中に絞首台、奥の方にガス室や遺体焼却場、銃殺場…。20万人が収容されていたことを想像するのが難しい静けさに圧倒される。

案内役のドイツ人女性が敷地外の林の中でこうべを垂れていた。収容所で何があったかを伝える音声が静かに響く。帰りの車中で女性は言った。「つらいです」。歴史に向き合い続ける姿勢が垣間見えた。

 

(信濃毎日新聞報道部長)

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