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第13回(ドイツ・イスラエル)戦後和解(2015年7月) の記事一覧に戻る

知りたかった「ドイツのなぜ」(高野 弦)2015年7月

なぜドイツは、かくも「過去の克服」が徹底しているのだろう。その精神性はどこからくるのだろう。一連の取材を通して知りたかったのは、そのことだった。外交的な戦略、「1968年世代」の活躍、そして今なお残るユダヤ社会への偏見。これまで必ずしも朝日新聞が伝えてこなかった側面が見えてきた。

 

「暗い過去に向き合うことは、ドイツを強くする」。何人もの方々から同じ言葉を聞いた。それは、民主主義を確かなものにするという意味でもあり、文字どおり、対外的に「強く」出るための条件として説明した方もいた。宿願の東西統一を成し遂げ、欧州の経済危機では、今や中核として振る舞うドイツ。近隣国からの信頼があってこそ、成し得たことなのだろう。

 

日本とドイツには戦争中の行いに違いがある。でも、それを突き詰めて日本の戦争を相対化したところで、何も益するものはない。そんな思いを強くした。

 

(朝日新聞国際報道部部長代理)

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