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第7回(カンボジア、タイ、ラオス)回廊が結ぶメコン流域圏(2008年2月) の記事一覧に戻る

経済にチャンスか(副団長:猿渡 純一)2008年2月

 汗ばむバンコクを飛び立って1時間余り、肌寒ささえ覚えるビエンチャン(ワッタイ)国際空港に降り立った。王都ルアンプラバンやジャール平原などとともに、かつてインドシナの戦乱のニュースで懐かしい地名である。30数年たって初めて訪れたその街は、黄金色の独特の尖塔がそびえる寺院に旧植民地時代の名残をとどめるフランス風の建物、小粋なカフェテラスとそこにくつろぐバックパッカーらしい欧州からの観光客。ヘルシーな地元料理もあって、まさにエコツーリズムの時代にふさわしい地上の楽園に見えた。

  しかし、われわれ取材団のために週末の朝の一時を割いてインタビューに応じてくれたブアソン首相の口から出たのは「貧困」と「格差」。1人当たり年間国内総生産(GDP)は都市部の1400㌦に対し、地方の農村部は200㌦以下。それを是正するには道路や交通機関の未整備が障害として立ちはだかり、成長を担う人材も極端に不足しているという厳しい現実だった。「2020年までに後発発展途上国(LDC)から脱出する」という国家目標に向け、首相は日本の政府開発援助(ODA)に加え、民間企業の投資拡大への期待も表明した。

  ただ、2国間ODAは1991年以降、日本がラオスへの最大の供与国になっているが、民間の直接投資(累計)は5位。それもODAのからんだ発電や建設関係が多い。純民間で数少ない実績をあげているビエンチャン郊外の縫製メーカーでは、人材の定着率に問題があるものの、人件費が隣国タイの5分の1で、さらに言語が東北タイと共通という意外な魅力も聞けた。豊かな資源と自然もある。

  ラオス経済にも「離陸」のチャンスがあるのではないか。いつの日か再び訪れ、その姿を目にしたいと心を残しつつ 、メコン川を渡った。

                                (日本記者クラブ会報2008年4月号から転載)

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