会見リポート
2026年07月01日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「アメリカ建国250年」(3) 渡辺靖・慶応義塾大学教授
会見メモ
現代アメリカ研究が専門の渡辺靖さんが、「実験国家アメリカの現状と展望」と題し、アメリカの民主主義のいまと今後の展望について話した。
司会 五十嵐文 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)
会見リポート
「暗黙のルール」が形骸化
吉田 通夫 (東京新聞デジタル編集部兼論説委員)
米国は独立250周年の節目を、トランプ大統領のもとで混迷と分断を深めながら迎えた。超大国は今後、どこへ向かうのだろうか。
慶応義塾大学の渡辺靖教授によれば、首都ワシントンの独立250周年記念事業は、トランプ氏に関連する団体が実質的に主導。複数の州が協力を見送るなど、国内の対立と分断を色濃く反映しているという。
渡辺氏は、米国を取り巻く課題の根底に、民主主義を支える「暗黙のルール」の形骸化があるとみる。
米国は英国王の圧政への反発を起点とし、権力集中を防いで市民主体で国家を統治する仕組みを採用した「民主主義の実験国家」と呼ばれる。渡辺氏は、実験を成功させるには、憲法で制度を規定するだけでなく、民主主義を支える国民の規範意識が「暗黙のルール」として必要になると指摘する。
この「暗黙のルール」の形骸化は、トランプ氏の振る舞いに象徴される。同じ国民であっても政敵とみなせば敬意を示さず、大学やメディアに圧力をかけ、私利を追及する―国民共通の規範が揺らげば、各自が独自の「正義」を語り始め、議論が成り立たなくなる。
今後、人工知能(AI)により雇用を奪われ、「犠牲者意識」を抱く国民が増える可能性がある。その感情の受け皿として、右派も左派もポピュリズム路線を強め、分極化に拍車をかけるおそれがある。選挙における中傷ビジネスの定着も、国民間の感情的な対立を深めるだろう。
ただ、悲観論一辺倒というわけでもない。司法や市場がトランプ氏の権力行使にブレーキをかける場面が散見され、民主主義に課された試練に耐えようとしている。そして、アメリカは驚きに満ちた国であり、衰退論や悲観論を克服してきた国でもある。渡辺氏は、良い意味で予測が裏切られることに期待を示した。
ゲスト / Guest
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渡辺靖 / Yasushi WATANABE
慶應義塾大学教授 / Professor, Keio University
研究テーマ:アメリカ建国250年
研究会回数:3
