会見リポート
2026年07月07日
15:00 〜 16:30
9階会見場
「アメリカ建国250年」(4) ポスト世俗化時代のアメリカ 藤本龍児・帝京大学教授
会見メモ
社会哲学、宗教社会学を専門とする帝京大学教授の藤本龍児さんが、「『ポスト世俗化』時代のアメリカ 受け継がれる『建国』の理念」をテーマに話した。
近著『宗教のアメリカ』(岩波新書)では、起源神話にはじまりトランプ政権にいたるまで、宗教の観点からアメリカを読み解いた。
司会 半沢隆実 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)
※ゲストの希望によりYouTubeでのアーカイブ配信は行いません。
会見リポート
宗教で読むアメリカ
鈴木 美勝 (専門誌「外交」前編集長)
ステレオタイプの米国論が横行するジャーナミズム(ジャーナリズム+アカデミズム)の中にあって、新たな視点を提示してくれた100分余の記者会見だった。
米国と宗教の密接な関係を俎上に乗せた言説は、決して新しいものではないが、藤本教授の論拠は、「トランプ2・0」が単なる世俗化の「揺り戻し」で起きている現象ではないという点だ。ユルゲン・ハーバマスの米国観―近代化の先頭を走って来たアメリカは「世俗化理論の巨大な例外」ではなく、実は「世界の標準形」だった―を導入部に、「ポスト世俗化時代のアメリカ」論を展開した。まず、国内対立は「世俗派」VS「信仰派」ではなく、共に宗教を重視する「宗教リベラル」VS「宗教保守」という図式で考えないと理解できない、「宗教保守」は礼拝への出席・祈りの頻度など、その「高い宗教性」ゆえに共和党支持の傾向があるが、実際には大統領トランプ支持は弱い。本音―トランプを好きではないが、民主党に投票する訳にはいかぬ―が見えないのだ。氏は一つエピソードを挙げた。イラン戦争を仕掛けたトランプは、光彩放つ自身を「神に選ばれし救世主」として誇示する宗教画風AI画像を発信したが、「宗教保守」の反発を食らった。なぜか。「神格化」「神聖化」はトランプ支持の一線を超える、彼は「神の道具」に過ぎないからだ。それは「不信心者」であっても神は「道具」として使う―「聖書」の一節に通底する考えの表われ。支持離れを恐れたトランプは、画像を即刻削除した。
最後に、氏いわく―「宗教保守」がテック・リバタリアンと連携して触手を動かしている宗教空間は、グリーンランド。そこは、新しいイスラエル―もう一つの「出エジプト記」。トランプが、データセンター、資源開発、宇宙産業の拠点にしようとするフロンティアだ―と。
戦後のアメリカ研究のパイオニア、斎藤眞を信奉し、社会哲学を礎に築いたアメリカ分析は興味深い。だからこそだが、秩序破壊・予測不能性・二面性を備えるトリックスターとしてのトランプ、またトランピアンによる認知戦・選挙戦術の実態をどう評価するかを改めて聞いてみたい。
ゲスト / Guest
-
藤本龍児 / Ryuji FUJIMOTO
帝京大学教授 / Professor, Teikyo University
研究テーマ:アメリカ建国250年
研究会回数:4
