2023年10月18日 13:30 〜 14:30 10階ホール
岸本聡子・杉並区長 会見

会見メモ

今春の統一地方選挙で、杉並区議会に占める女性議員が半数となった。

いまの区議会の現状、地方と国政で女性議員が増えるためには何が必要なのかなどについて、岸本聡子区長が話した。

岸本さんは、オランダ・アムステルダムを本拠地とする政策シンクタンクNGOで研究員を務めたのち、2022年6月の杉並区長選挙に出馬。現職を187票差で破り、同区で初の女性区長になった。

 

司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

無関心層を自治に巻き込む

迫田 朋子 (企画委員 NHK出身)

 古い話になるが、1987年の統一地方選挙で市議会議員に立候補した3人の女性を追いかけ、朝の番組で「主婦選挙」というタイトルでリポートをしたことがある。土井たか子氏が社会党の党首になったときで女性の政治進出が注目を集めていた。生活者の視点で基礎自治体の政治に参加することの意義を強く感じ大きな流れができたと思ったが、そう簡単ではなかった。

 この4月の統一地方選挙で杉並区議会は女性議員が半数となった。去年、現職の区長を僅差で破り就任した岸本聡子杉並区長の存在が大きいのは言うまでもない。「議会の景色が変わった」と岸本氏は言う。就任して1年3カ月、この短い期間での動きは目をみはるものがある。会見の滑り出しは、選挙公約をどう実現してきたかといういわば通常の会見でやや硬さが残ったが、自らの政治信念を語る段になっての口調には強い思いと自信が感じられた。

 印象に残った言葉が「エンパワーメントの連鎖」。エンパワーメントは開発協力の分野で女性支援やコミュニティー支援でよく使われる言葉だ。国際的な市民活動20年の経験があるだけに実感がこもる。必ずしも女性ということだけでなく、自らの力を発揮できていない全ての人への目配りがある。地域社会の自治に参画する人を増やし、これまで無関心だった人を巻き込む。自治体の持続可能性をそこに見いだしている。

 それでも旧態依然の社会はそう簡単には変わらない。議会のやじについて問われると、「私という規格外な人が現れたときの自然な反応」と語り、精神的なエネルギーを奪われることがあってもやるべきことを見据えてやるしかない、と淡々と述べた。国際社会で鍛えられた感覚は、そう簡単にくじけるものではないことを感じさせた。

 エンパワーメントの連鎖は、都政、国政と続いていくのか。参加型民主主義の真価が問われるのはこれからだ。


ゲスト / Guest

  • 岸本聡子

    杉並区長

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