会見リポート
2023年05月12日
15:30 〜 17:00
10階ホール
「多様性社会への課題」(3) 神谷悠一 LGBT法連合会事務局長
会見メモ
「一般社団法人LGBT法連合会」の神谷悠一事務局長が、LGBT法案をめぐる現状を当事者はどうみているのかについて話した。
司会 佐藤千矢子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)
『差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える』(集英社新書 2022年8月)
会見リポート
LGBTQ理解増進へ、当事者目線語る
石田 敦子 (毎日放送東京報道部)
5月18日、自民は公明と修正合意した「LGBT法案」を国会に提出した。2021年に超党派の議員連盟がまとめた理解増進法案を土台にしているが、「性自認」を「性同一性」にするなど保守派に配慮した変更をしている。立憲はこれに対して21年の内容を踏襲した対案を提出した。
12日に行われた今回の会見で、神谷氏はLGBTQに関する説明に長い時間を割いた。「性自認」と「性的指向」は自分の意思で変えられるものではなく、治療対象でもないことは科学的に確立した知見であること。教育、就労、医療・福祉などあらゆる場面で当事者は差別に遭遇すること。カミングアウトしていない人は日常的に嘘をつかざるをえないこと。当事者は身内から嫌悪感を抱かれることが多く、他の被差別のケースに比べても孤立しやすいこと。セクハラ被害に合った経験は、非当事者女性の2倍、非当事者男性の3倍にも上ること…。法案議論の中で、LGBTQ当事者の客観的事実が踏まえられていないという神谷氏の強い懸念の表れだろう。
一方、永田町の外ではG6とEU代表部の駐日大使がLGBTQ当事者を差別から守ることを求めるプライベートレターに署名し、経団連会長は日本では理解増進法案の提出すら議論になることを「恥ずかしい」と発言するなど、明確なメッセージが発信されている。世の中の理解は自民が考える以上に進んでいるのではなかろうか。
神谷氏は終始客観性をもって話したが、会見の最後にひとつ主観を口にした。首相と面会したとき「岸田さんはあまり興味が無いように見えた」そうだ。G7での「体面」を気にしていただけではよもやあるまい。助けを求めるLGBTQ当事者=国民をどう守るのか、今後の首相のリーダシップを注視していきたい。
ゲスト / Guest
-
神谷悠一 / KAMIYA Yuichi
LGBT法連合会事務局長 / executive director, Japan Alliance for Legislation to Remove Social Barriers based on Sexual Orientation and Gender Identity (Japan Alliance for LGBT Legislation, J-ALL)
研究テーマ:多様性社会への課題
研究会回数:3