2023年05月18日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「放送法文書をどう読むか」(1) 瀬畑源・龍谷大学准教授

会見メモ

放送法4条が定める「政治的公平」の解釈をめぐる安倍政権下での首相官邸とのやりとりを記した総務省の行政文書の内容や経緯から見えてくる問題や課題を専門家に聞くシリーズ「放送法文書をどう読むか」の第1回ゲストとして、瀬畑源・龍谷大学准教授が登壇。放送法文書問題を公文書管理の視点から解説した。

 

司会 田玉恵美 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

後世へ説明責任果たすために

青島 顕 (毎日新聞社社会部)

 総務省の官僚が書いたとみられる文書から見えることは何か。象徴天皇制研究者で、公文書管理に詳しい瀬畑准教授が読み解いた。

 礒崎陽輔首相補佐官(当時)が放送法の解釈を変えて、テレビ報道をコントロールしようと画策するさまと、抵抗する官僚の対応が記録されている。

 決裁文書でなかったこともあり、総務相だった高市早苗氏が「捏造だ」と主張し、文書の真偽や、発言した高市氏の進退に焦点が当たった。しかし、本質はそこにはないと瀬畑氏は考える。「作成者である『官僚にとっての真実』が書いてある」

 総務省の課長補佐が幹部への報告のためにメモを取り、目次と参考資料をつけて整理。政治介入への対処事例として、後任者に引き継ぐ意図があったのではないかとみる。

 文書の性質は分かりにくい。組織共用性を要件とする行政文書に該当しており、松本剛明・現総務相は「行政文書だ」と追認したが、明るみに出るまでは「個人メモ」として電子データの形で密かに保管されていたとみられる。

 このような政治家にとって都合の悪い内容の書かれた文書は、表だって作成・保存されにくい。加計学園の問題を受けて、改正された公文書管理ガイドラインは、打ち合わせ文書に、「相手方の確認」を求めており、一層作られにくくなっている。仮に保存されても、なんらかの思惑や内部告発がない限り、表に出ることはない。

 瀬畑氏は「政治主導が進む中、政治家の指示を記録に残す重要度は増している。だが、こうしたレク記録は行政文書として作られていないし、今後は作ることに消極的になっていく可能性が高い」と指摘する。

 政策形成過程を記録することは、後世の人への説明責任を果たすことだ。たやすくはないが、瀬畑氏は実現可能な仕組み作りを望んでいる。


ゲスト / Guest

  • 瀬畑源 / Hajime SEBATA

    龍谷大学准教授 / associate professor, Ryukoku University

研究テーマ:放送法文書をどう読むか

研究会回数:1

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