2022年11月11日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「中間選挙後の米国と世界」(1) 渡辺靖・慶應義塾大学教授

会見メモ

米中間選挙は11月8日に投票が行われ、開票作業が続く。

渡辺靖・慶應義塾大学教授が登壇し、現時点での選挙結果への見方、米国の内政、外政への影響、分断の行方などについて話した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

 

『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋』(岩波新書、2022年8月)


会見リポート

米国の分断、好転の兆し見えず

三浦 俊章 (朝日新聞出身)

 11月8日投票を受けての「中間選挙後の米国と世界」シリーズの第1回は、フィールドワークに基づいて米社会の的確な分析を続けている渡辺靖・慶應大学教授をお迎えした。選挙から3日後で、この時点では上下両院とも、民主・共和両党のどちらが勝利するか見えない段階だった。

 選挙結果について渡辺氏がまず指摘したのは、保守派の間で流布されていたレッド・ウエーブ(共和党の大勝)が起きなかったことである。大統領選挙が、未来を問う「希望の選挙」であるのに対して、2年後の中間選挙は、現職が審判を受けて与党が議席を減らす「失望の選挙」と言われている。インフレや治安悪化などマイナス材料があるにも関わらず、民主党が健闘した理由として渡辺氏が挙げたのが、①トランプ政権下で保守派判事が6対3の多数派となった連邦最高裁が中絶の権利を大きく制限する判決を下したこと②共和党の候補者に過激な言動を繰り返す「ミニ・トランプ」が輩出したことだ。それがリベラル派や女性の有権者の反発を高めたという。

 選挙後に予測されるのは、共和党がどういう政党であるべきかというアイデンティティー論争であり、フロリダ州知事選で圧勝したデサンティス氏などトランプ後の動きも激化する可能性がある。一方、共和党が議席を伸ばした下院では、民主党政権との対決姿勢が強まり、バイデン大統領は国内政治にエネルギーを奪われ、外交に取り組む余力が残るのか心配だとも指摘した。

 最大の懸念は、米国の分断が一層深まるという見通しだ。かつて「すべての政治はローカルだ」という故オニール下院議長の名言があったが、いまやワシントンだけでなく、日常の生活圏に至るまで中央の政治対立が持ち込まれている。「好転する兆しは見えない」という厳しい所見だった。


ゲスト / Guest

  • 渡辺靖 / Yasushi WATANABE

    日本 / Japan

    慶應義塾大学教授 / professor, Keio University

研究テーマ:中間選挙後の米国と世界

研究会回数:1

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