会見リポート
2022年07月26日
13:00 〜 14:00
10階ホール
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使 会見
会見メモ
会見リポート
ロシアの狙いはウクライナの完全破壊
常盤 伸 (東京新聞外報部編集委員)
2月24日のロシアによるウクライナ侵攻開始からが5カ月が経過した。戦況は膠着状態だが、ウクライナの人々にとって悪夢のような日々が続く。
「ロシアが人道に対する罪を犯し続けていることを忘れないでください」。大使は冒頭でそう訴え、ブチャでの虐殺や、商業施設へのミサイル攻撃など、戦争犯罪の疑いのある様々な被害の実態について写真を見せながら詳しく説明した。
国際的な非難をものともせず破壊的な攻撃をプーチン大統領が続けるのはなぜか。その狙いを大使は「ウクライナを脅して、ロシア側の『条件』を受け入れさせるためだ」と喝破する。「条件」とはゼレンスキー大統領を追放し、親ロ派大統領にすげ替え、占領地のロシア併合を認め、EUやNATO加盟を断念すること。そうすればロシアは一時的な停戦に応じるかもしれないが「ウクライナはなくなる。その後、プーチンは再び攻撃を仕掛けてくる」と言い切る。
軍事攻撃と並んで深刻なのは、ウクライナ人がロシアに強制移送されている問題だ。大使は、「東部から約200万人が移送された」と従来の情報を上回る推計値を指摘した。事実なら衝撃的な規模だ。旧ソ連は第2次大戦中にバルト三国などから大量の住民をシベリアなどに移送した。21世紀の現在、スターリン体制下と同様の悲劇が繰り返されているのだ。大使はプーチン氏の最終目標は「ウクライナを完全に消し去り、ウクライナ国家と民族を完全に破壊することだ」と明言した。
国家存亡の危機に立たされているウクライナは、ロシアを「テロ支援国家」に指定するよう米国などに求めている。指定されれば対ロ包囲網が強化されよう。会見でも冒頭と最後に、「ロシアはテロ国家です」という主張がスクリーンに表示された。プーチン氏は妄想的な歴史観で侵略戦争を完遂する姿勢を表明しており、状況は深刻である。私たちはウクライナの訴えを重く受け止めるべきだろう。
ゲスト / Guest
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セルギー・コルスンスキー / Sergiy Korsunsky
駐日ウクライナ大使 / Ambassador of Ukraine to Japan